劇場公開日 2010年10月2日

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「【”天から二物を与えられた男”トム・フォードがコリン・ファースの魅力を十二分に引き出した作品。「アナザー・カントリー」を思い出す作品でもある。】」シングルマン NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【”天から二物を与えられた男”トム・フォードがコリン・ファースの魅力を十二分に引き出した作品。「アナザー・カントリー」を思い出す作品でもある。】

2020年6月11日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

 ー愛する人を亡くした男が未来への希望を失い、過去に捕らわれる姿と、有る出来事がきっかけで、再び未来を見つめようとする姿を痛切に描き出した作品。ー

<印象的なシーン.1>
 ■冒頭、雪原の中に横転する車。投げ出された男の死体。目は見開かれている。その死体に近づき、血だらけの顔に口づけをする男。

 物語は、死体の男ジム(マシュー・グード)に口づけをした男、大学教授ジョージ(コリン・ファース)が過去のパプでの二人の出会いのシーンから、近しくなっていくシーンを随所に挟みながら、彼が深い喪失感の中、生きる現在を行き来しながら進む。

 ジョージの講義は精彩を欠くが、ジョージに興味を持つ学生ポッター。(ニコラス・ホルト:美青年だなあ・・)。
ージョージが講義で使用するテキストは”オルダス・ハクスリー”の”AFTER MANY A SUMMER”である・・。上手いなあ。-

 舞台は、冒頭ジムの死の日付が1962年と出るし、キューバ危機らしいTV映像が時折挟み込まれるので、彼の時代のアメリカだろう。
 当時のアメリカと英国の関係性も併せて仄かに描かれるし、時代的にジョージとジムの関係は世間的には受け入れられない。

 ジョージの元恋人で今は友人のシャーロット(ジュリアン・ムーア)の所にジムの死を知り錯乱状態で駆け込むジョージの姿。

 自死しようと、服を揃え”ネクタイはウインザーノットで・・”とメモを書くジョージだが、あと一歩が踏み出せない・・。
ー完全に、トム・フォードの趣味でしょう・・。-

 シャーロットと”過去”を懐かしむジョージ。だが、そこにポッターが”偶然”現れ、ジョージは”未来”を見ようとするのだが・・

<印象的なシーン.2>
 ジョージがポッターに誘われ、夜の海に入るシーン。幻想的な海中の二人の姿。

<印象的なシーン.3>
 ポッターが安らかに眠る姿を見て、拳銃を引き出しに入れ鍵をかけるジョージ。
 だが”その時は来て”。
 闇から現れたジムがジョージに近づいてくるシーン。
ー冒頭のシーンとの、見事な連動性。-

<トム・フォード監督のクラシカルだが、モダンで、スタイリッシュな世界観に浸れる作品。物語構成も見事である。
 梅林茂が参画した音楽も作品に余韻を齎している。>

NOBU