「線路(夢)はつづくよ、ど~こま~で~も~♪」RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語 septakaさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0線路(夢)はつづくよ、ど~こま~で~も~♪

2011年1月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

幸せ

『うん、何?』(08)
錦織良成監督の作品。

ほぼ、単館上映だった前作から
松竹配給でシネコンで上映される。
ある意味、今作のメインテーマでもありますが、
錦織監督御自身も夢を叶えられた瞬間だったのではないでしょうか。

☆彡     ☆彡

うわぁ、やばいよ
中盤以降、ほぼ涙をポロポロこぼしまくりだよ
いや~~、やっぱり錦織監督の作品、好きだなぁ(笑顔)

〈 本当にやりたい仕事 〉
〈 終点まで乗ってくれよ 〉

■島根県で長期ロケ
 冒頭の説明でも触れましたが、
 撮影の大部分は島根県で行われています。

 一畑電鉄、通称バタ電は
 実際に運行をしている電車です。

 ただ木造の2両車両、デハニ50系は
 運行を中止していましたが、今作の為に復活をしました。

 運行途中、野焼きの煙が車内に充満したり、
 おばあさんが踏み切りの上で荷物を落としたり、と
 様々なのどかでほのぼのとした風景が描かれていました。

 その中でも、電車から自転車を小脇で押しながら
 降りてきたシーンに気づかれた人はいらっしゃったでしょうか。

 私の中では、これが懐かしさを覚えたツボでして、
 名古屋在住時代、仕事でたびたび利用していた近鉄の養老線に
 “サイクルトレイン”という車両がありました。まさに今作の
 ワンシーン同様、電車内に自転車をそのまま持ち込めるサービスなのです。

 その路線も、今作同様、
 稲穂たなびく田んぼや、今作には登場しませんが、
 みかん畑を車窓から眺めることが出来ました。バタ電と同じで、
 1時間に1本しか走っておらず、電車に乗り遅れてしまい、お得意先で
 お茶とみかんを御馳走になりながら、時間を過ごしたこともありました。

 今作でも、強く感じたのですが、
 そういうとき、そういう場所って、
 時間の進むスピードが都会と比べると、非常にゆったりしている。

 “これを島根時間っていうんだろうな”

 映画が始まったばかりの序盤。
 シーンは東京なのですが、ストーリーの進むテンポが遅いんです。
 それが、最初はまどろっこしいのですが、中井貴一さんが島根に
 引っ越したあたりから、そのテンポとスクリーンの風景がすごくあっているんです。

 そう感じ始めた瞬間、完全に作品の世界へと誘われていきました(笑顔)

■夢の実現
 今作をまさに地で行ったニュースがありました。

 千葉県にある「いすみ鉄道」。電車運転士になる
 訓練費用約700万円を自己負担することになりますが、
 “少年時代に電車の運転士になる夢を叶えませんか”と
 募集をしたところ2回とも会社の予想を遥かに上回る応募がきました。

 先ほどHPをのぞいてみたのですが「業務に支障をきたしますので、
 本件に関する電話でのお問い合わせは御遠慮ください」との記載がありました。
 どれだけ応募が殺到したんだろうとの驚きもありますが、今作の主人公同様に、
 電車の運転士に憧れ続け、しかも訓練費用を自己負担してまでも夢を叶えたい。

 はたから見れば無謀とも、思える挑戦に身を投じる勇気のある人が
 それだけいる、ととれば、どこか閉塞感の漂う日本にもまだまだ一縷の望みがある気にさせられます。

■キャスト
 『うん、何?』と比べると、超豪華キャスト。
 宮崎美子さん、甲本雅裕さんの2名は同作と今作連続出演されています。

 中井貴一さん「良い話すぎる」と出演オファーを3度断ったそうですが
 4度目に出演を快諾。電車を点検する場面、運転をする場面、すべて、
 CGや吹替えなしで、本人が演じられています。

 都会の超エリートから、島根の良きお父さんに
 変わっていく表情の変化に、娘役の本仮屋ユイカさんではありませんが癒されました(苦笑)

 その本仮屋ユイカさん。『スウィングガールズ』『ドロップ』で
 その才能は垣間見せていましたが笑いをとるのが上手すぎです。

 彼女がすごいのは、普通にニッコリと笑顔でセリフを話して、
 ちっとも嫌らしさを感じさせずにお客さんの笑いをとってしまうところ。

 今作だと、甲本さん演ずる電車運転手に
 「鉄道整備基地(車庫)を見学させてください」と申し出る場面。

 甲本さん 「えっ?鉄子(鉄道好きの女性をこう言います)」
 本仮屋さん「サチです♪(素の笑顔で笑いを取ろうなんて姿勢全くなし)」

 いやぁ~~、笑わせていただきました。ごちそうさまでした(笑顔)

☆彡     ☆彡

男同士の友情
家族の再構築
夢の実現
就職(仕事)

日常のありふれたメッセージが
島根県を舞台に奇をてらうことなく描かれていました。

これだけ涙を流してしまったのですから、もちろん5点満点です(笑顔)

septaka