劇場公開日 2009年11月14日

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「意識的に無意識のうちに学校ってこうだね、今でも、日本」THE WAVE ウェイヴ talismanさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0意識的に無意識のうちに学校ってこうだね、今でも、日本

2021年7月12日
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鑑賞方法:DVD/BD

怖い

知的

難しい

アメリカでの実話だがそれこそドイツにとって「あっち」の話ではない。だからこそ映画化されたし、この映画(大人向けと学校教材向けと複数あるらしい)を学校の教材として使うためのワークブック、資料、教師用ガイドブックの類はドイツに山ほどある。

体育&現代社会担当の男性教師がプロジェクト授業の提案をするところから始まる。「プロジェクト授業」はドイツではよくあり、カリキュラム通りの授業からちょっと離れて科目横断的に自主的に調べ考える短期の授業だ。そのテーマとして教師が提案したのが「独裁」。

ドイツのギムナジウムの生徒なら、そんなのもう子どもの頃から学校で習い学習し見学してきたからわかってる!ところが!というのがこの映画の面白いところです。あれだけ生意気で自由な生徒達が教師の提案でジワジワと互いを監視し始める。年上&権力→同調→年下&弱さ。いつもどんな場合もこんな風に動いていく。

居場所のない子、移民の背景の子、生徒間にある貧富の差。若い時ほど染まりやすい。親世代の方がリベラルなので「そんな授業、大丈夫?」と心配する。

そして「白バラ」のゾフィーのように自分の頭で考え行動に出てビラをまく女子生徒も登場する。その子に対して「お前、ゾフィー気取り?」と言う男子生徒もいる。つまり歴史の授業などでその男の子だってゾフィーを知っている。「この政権おかしい!」と兄達とともにナチ政権反対のビラを撒いて即刻捕まりギロチン刑にあったミュンヒェン大学の学生ゾフィーを。でも「知っている」ことと「自分達の行動」は異なる、異なってしまった。

居場所がなかったからかもしれない。コンプレックスの塊だったのかもしれない。でもそんな彼らや普通の人が喜んで独裁の下に身を投げ出し歓喜し「誤った」全能感に満たされる。この感覚への誘惑に抵抗できるほど私達は強いか?と自問する。紙一重ではないか?と自問する。

自分を肯定し自分にも他人にも優しく居る。そして自分に自信を持ち未来に夢を持つ。今の自分が幸せであることを幸せだと思う。人と自分を比べない。こういったことがてきれば大丈夫だと思いたい。

恫喝するような年上の人間に忖度しないで若い人がもっと活躍できるようにするためにも、充分に働いたら年配の人間には現役から退いて席を譲って欲しい。そして若い人に人生の別の或いは後半の楽しみ方を示して欲しいと思う。

talisman