劇場公開日 2009年12月5日

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キャピタリズム マネーは踊る : インタビュー

2009年12月4日更新

マイケル・ムーア監督インタビュー

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「僕らのお金を返してくれ!」とウォール街へ突撃取材
「僕らのお金を返してくれ!」とウォール街へ突撃取材

――記者会見で、有名になったことでアポなし突撃取材が難しくなったと話していましたが、今後も突撃取材を続けますか? 今までの経験を生かしたフィクションを撮ったり、ジャーナリストに専念するという選択肢もあると思いますが。

撮影中のムーア監督は人々の注目の的
撮影中のムーア監督は人々の注目の的

「有名になったことでいろんな人がテープなどを投稿してくれるようになり、そのお陰で取材は楽になった。その内容もそれぞれ1本の映画を作れるような話なので、そういう意味では有名になったのは大きなメリットだと思うよ。でも大企業の関係者に取材したくても絶対に拒否されるのも事実だ。僕の突撃取材はパフォーマンス的だと感じるかもしれない。でもそこには真の理由があって、一般市民から面と向かって質問されたらちゃんと答えるべきだと思うからなんだ。僕はこれからも突撃取材をし続けるよ。映画にはエンターテインメント性が必要であると同時に、正しい情報を伝えなければならないと思っている。ストーリーにクライマックスを作るのも必要不可欠だ。でもね、例えばシェイクスピアが10本戯曲を書いたところで、当時の観客は『もう恋の話は飽きたよ』と言っただろうか? 同じようなテーマであったとしても、うまく描けてさえいれば何度でも見応えあるものが生まれると信じている。

精力的に作品を撮ってきたムーア監督 少し休養が必要?
精力的に作品を撮ってきたムーア監督 少し休養が必要?

さて、僕が今後何をするかだけど、いくつか戯曲を考えていて、映画の脚本も書いてるし、新しいドキュメンタリーのアイディアもある。あとは昔ロンドンで1人芝居をやったことがあるんだけど、同じものをニューヨークでもやってみようか計画中だ。ただ、正直僕は今疲れきってるんだ。20年間シャカリキになって働いて、今回の作品もすごく苦労したし、今年の8月中旬からずっと取材を受け続けてきた。僕が自分のドキュメンタリーについて取材を受けるのは、今回が最後になると思う。少なくとも当面の間はね」

――本作は監督の行き場のない怒りを感じる作品でしたが、この映画を撮った原動力は怒り? それともアメリカをよくしたいという使命感ですか?

「ふむ。ウェブ媒体の質問はヘビーで興味深いね。TVの記者と比べるつもりはないけど、質問の内容がまったく違う。ウェブは報道の未来だから、希望が持てるね」

――軽い質問に変えましょうか(笑)? バゲッジロストの荷物はその後どうなったのですか?

「荷物はプレミア試写会の1時間前に無事届いたよ(笑)。ズボンは替えられなかったけど、シャツとジャケットはどうにか着替えられた(笑)。(このことを会見でネタにしていたが)JALを非難するつもりはないよ。僕がとやかく言わなくたってすでに彼らは大変な状況に置かれているしね。ただ、JALは87年に民営化されてから業績が悪化していった訳だから、まさにキャピタリズム(資本主義)がJALを破綻に追い込んだといっても過言ではないよね。

責任感と怒りが監督を突き動かし その怒りをユーモアにかえて映画を作る
責任感と怒りが監督を突き動かし その怒りをユーモアにかえて映画を作る

この映画を撮った原動力の話に戻るけど、答えは“怒り”だ。でも映画自体は全力を投じて笑える作品に仕上げたつもりだよ。アメリカのコメディアンについて触れさせてもらうと、過去100年間のトップクラスのコメディアンはみんな何かに怒りを感じていた。彼らはユーモアのセンスに恵まれていたから、ただ怒りをぶつけるのではなくて、うまい具合に風刺しながら社会を批判していたんだ。チャールズ・チャップリン、マルクス兄弟、レニー・ブルース、リチャード・プライアーといった人たちはみな怒りをユーモアにかえて発散させていた。だから僕もなるべく怒りをユーモアにかえて描こうと思っているよ。それと同時にアメリカがよくなってほしいと切に願っている。でもそれは、アメリカ合衆国という民主主義国家の一市民としてごく当たり前のことだと思うんだ。なぜなら民主主義の国の一員である以上、社会に貢献しなければならないからだ。記者のみなさんがウェブサイトを通して社会貢献しているように、僕は映画を通して貢献している。だから、この映画を撮った理由は“責任感”、原動力となったのは“怒り”だ」

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