劇場公開日 2010年2月5日

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「優先順位」インビクタス 負けざる者たち とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0優先順位

2018年11月29日
PCから投稿

幸せ

萌える

やるべきことは山積み。
その中で、何をなすべきか。
解決しなければいけない外交問題よりも、選手の名前を覚えて激励に行くことの方が大切。
憎い相手を排除することよりも、手を結ぶ方が大切だから。
そのためには、相手の大切なものを大切にする。
ただそれだけ。
それだけが、一般的にはとても難しい。

インビクタス=不屈。
たんに、不屈というと、虐げられても自分の信念を曲げない。固執してしまうことが多い。どうしても、日ごろの格差をなかったものにするために、自分たちの優位性・主張を強調・強要したくなる。
でも、マンデラ氏は違った。
相手を認め、手を結ぼうと呼びかける。
それぞれが、それぞれの主張を強めれば、人々がバラバラになり、国が崩壊してしまう。そんな実例は枚挙にいとまない。
なんたる精神力。なんという先を・世界を見通す力なのだろう。
そんなマンデラ氏の心の中でだって、様々な思いが縮だれるのだろう。
だからこその、「わが魂の主は私。他の誰でもない私」。
憎むか、心折れて卑屈になるか。
それとも、今、自分の信念にとって必要なことをなすか。
それを決めるのは私。
そして、私の想いは人々に広がっていき、大きな波となる。

映画において、ツッコミどころはたくさんある。
感化されたピナール氏の心の動きが唐突。
黒人選手と他の選手との関係とか、ラグビーを教えに行く場面とか、警備のメンバーとか、わりとすんなりと仲良くなってしまうので、差別が見えにくい。
否、アパルトヘイト(分断)は、住む場所や利用できる施設等を分けていたから、お互いが見えなくて、私がイメージする差別とは違うのかもしれない。

とはいえ、全世界が問題視して、経済封鎖までして、アンチを唱えた政策。
 そんな中で、エコノミックアニマル日本は、他国が経済封鎖している中で、貿易(特にダイヤモンド)を続け、本来”白人”でなく、”カラード”として扱われるはずなのに、”名誉白人”として恩恵を受けていた。
 だから、自分が南アフリカに行っていたわけでもないが、密かに、南アフリカのものは買わないようにしていたけれど、引け目を感じていた。
 だから、なかなか、見る勇気が出なかった。

そんな心の引け目は消えないが、

なんと気持ちの良い映画なのだろう。
経済的優位とか、
地位の高さとか、
そんなケチなことではない、
たとえ刑務所に収監されていても、
人としての器の大きさが空いっぱいに広がって、世界を包み、
志の高さが風に乗って、どこまでも高く飛び立っていくような気がした。

追記:
モーガン氏が出演なさっているからではないと思うが、マンデラ氏と『ショーシャンクの空に』のアンディが重なってしまう。(無実の罪で)刑務所に収監されていたというところしか重ならないのに。

東京国際映画祭六本木ヒルズアリーナ野外上映にて鑑賞。

とみいじょん