劇場公開日 2009年8月8日

  • 予告編を見る

「波乱万丈を乗り越えて確立されるブランド」ココ・シャネル(2008) Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5波乱万丈を乗り越えて確立されるブランド

2013年3月3日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

知的

総合:70点
ストーリー: 70
キャスト: 75
演出: 70
ビジュアル: 75
音楽: 70

 今でこそ世界的な名声を勝ち得た今のシャネルだが、その華やかな印象とは全く異なるシャネル個人の挫折の日々と波乱万丈の人生が描かれていて楽しめた。
 親を亡くし捨てられた少女時代。人々に理解されず、生まれや教育や地位で差別され阻害される若き日。店を立ち上げても赤字だらけで催促に追われるだけの毎日。次第にデザインが認知されはじめても、出自や斬新さゆえに批判や陰口がつきまとう息苦しさ。会社が大きくなった後もコレクションが時代遅れと酷評され、育てた会社を手放さなければならないかもしれないという重圧。ファッションの世界は極めて厳しい重圧とストレスにさらされ続けるというが、シャネルですらブランドが確立される前にはまたは確立された後でも、このような経験をいくつも乗り越えてきて現在があるのだという描き方が良かった。
 また既存の価値観に飽き足らず、女性の動きやすさを考慮した合理的なデザインを提案しつつも、古い価値観から離れた新しいエレガンスを取り入れる。それに反発する頭の固い人がいるのは世の常だが、それに負けることなく自分を貫いていく姿がまさにファッション界の革新者であり、それが見ていて心地よかった。
 伝記映画といえども比較的シャネルは良い立場で描かれており、その意味では真実性は高くないのかもしれない。例えば戦争中にドイツ軍人と恋愛関係だったために戦後批判的に見られたというのが現実にはあったようだが、そのような部分に触れられることはない。しかしファッション界に残した彼女の足跡をさっと見るにはいい映画だと思った。

コメントする
Cape God