劇場公開日 2009年10月24日

「後半臓器移植の是非を真正面から投げかけてくシーンで深く考えさせられました。案外奥が深いですよ。」僕の初恋をキミに捧ぐ 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0後半臓器移植の是非を真正面から投げかけてくシーンで深く考えさせられました。案外奥が深いですよ。

2009年11月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 立ち上がりは、軽快なラブコメ風。主人公逞が先天性の心臓病で死んでいくストーリーに平井堅のテーマが被るお決まりの御涙頂戴のパターンの作品なんだろうと思っていました。『Life 天国で君に逢えたら』と同じ展開ですしね。そんな訳で、全然期待しないで、ついでで見た次第です。

 ところが後半から俄然大人の鑑賞にも堪えられる見応えあるストーリーに変わります。 逞が心臓移植の必要に迫られたとき、友人の臓器を奪ってまで生き伸びたくないと逞が決意するところでは、臓器移植の是非を真正面から投げかけてくれました。
 人の命を奪ってまで生きたくはない。生きるって何?何のために生きなくちゃいけないのと激しく自問自答する逞の想いに共感できました。

 小地蔵は言うまでもなく臓器移植にいかなる理由でも反対です。しかし、心臓を病んでいる幼い命に世間は同情しがちです。そしてそのご両親は必至になってドナーを捜されることでしょう。
 けれどもその臓器が恩人や親友のものだったら、どうでしょう?知らない人のものだから、奪えるのです。本作のようにクラスメートで親友の約束を交わそうとした子のもので、本人がドナーカードを持っていたとしても、素直に受け取れないのが人情でしょう。
 まして本作のドナーとなったクラスメートの場合、脳死判定後も涙を流したり、手を動かすことも描かれました。医師は、脊髄が反射しただけの動作だと説明します。けれども観客としてみていても、あれが死んだ状態とはとても思えません。だからクラスメートのご両親が、本人の臓器提供の意思表示を翻意してまで、いつの日か医療技術が向上して、この子が救える日が来るかも知れない、その日がくることに賭けたいと医師に詰め寄った気持ちが痛いほど分かります。

 だけど逞をこころから愛する繭も必至です。そのご両親に土下座して、床に額をこすりつけてまで、息子さんの心臓を譲ってくださいと真剣に願う姿にも、気持ちがよく伝わってきて、複雑な感情になりました。

 ここまで双方の気持ちをストレートにぶつけ合う作品はなかっただろうと思います。ラブストーリーを期待してきた観客にも、臓器移植について深い感銘を与えることになるでしょう。

 こんなシリアスな後半に繋がる前半は、目を覆いたくなるほどに逞と繭がいちゃいちゃ、べたべたするシーンに付き合わされました。
 なにしろ幼児の頃に病院で知り合った二人は、本当に生まれる前から約束しあってきたかのように仲良しなんです。おませな繭は、お医者さんごっこで、逞のズボンを取ろうとするとか、繭の方から唇を逞の口に押しつけて、なんと年少期にふたりは、ファーストキッスを済ませていたのです。さらには結婚の約束まで。
 そんな繭の積極さがラブコメタッチが描かれるので、妙に明るい展開で進んでいったのです。

 ただ年少期に逞は、自分が長く生きられないことを偶然知ってしまい、繭との恋も長くはないことを悟ります。いったんは彼女の将来を考えて、離れようと全寮制の名門高校を選択します。それでも猛勉強して、見事に追随する繭の想いの強さには脱帽です。入学式での新入生代表挨拶の壇上に立った繭が、挨拶を無視して逞に思いの丈を告白するシーンが見物です。

 この直向きな繭の逞への想いがとってもピュアに描かれているので、その後の二人の永遠の別れには思わず涙を誘われました。劇場は臆面もなく号泣している人もいたほどです。それと前半の子役の二人の演技が凄くよくて、ほのぼのとさせてくれました。
 魂を揺すぶられるまでには至りませんが、純真なこころになれるラブストーリーをお探しなら、お勧めです。結末は解っていても、涙を誘われてしまうことでしょう。

 ただラストの病院外デートや結婚式のシーンは蛇足です。病院外デートのシーンは、映画『LittleDJ』のラストシーンを思い出しました。こっちの作品も泣けます。

流山の小地蔵