劇場公開日 2010年1月22日

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「論点を捻じ曲げている悪質な映画」オーシャンズ とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)

論点を捻じ曲げている悪質な映画

2018年10月28日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

怖い

裏切られた感が半端ない。これをドキュメンタリーといっていいのか?
マイナス評価(総合、物語、演出)。

映像の中で繰り返される命を懸けた戦い。生物は皆、何かの命を糧として生き伸びていくのだということを思い知らされる。
 人間だって同じ。
 ただ、強欲という名の化け物が他の生物を危機に陥れている。
 だのに、人間の営みが全て悪いような印象を植え付ける。「護ってあげねば」という世界の主の欧米の発想。否、地球の全てがわが手にあると思っているらしい。捕鯨船を目の敵にして何でもありの攻撃を仕掛けてくるオーストラリアの団体と同じ発想で、途中で観る気が失せた(と言いつつ最後まで観ましたが)。

ただ、映像は美しい。
 特に圧巻なのは、嵐の海に翻弄される船。他にも、ダンスシーンの如く編集されている映像、戦闘シーンの如く編集されている映像。etc。
 ドキュメンタリーと聞いたけど、映画のストーリーにあう演技を動物たちがしてくれているかのよう。
 本当にドキュメンタリー?CG処理したのではないかと思わずにはいられない映像が繰り出される。特にクレジットの”お断り”を知ってしまうと、全ての映像に疑いの目を向けたくなる。
 元の映像はドキュメンタリーなのかもしれないが、意図して編集した映像が続き、何が真実で何が作為的なものか頭がこんがらがってくる。

よくTVでやっているような、海の生物の生態を見せてくれる映画と思ってみると、生物の生態に関しては説明がない(字幕版を鑑賞)。

ひたすら、監督の訴えたいストーリーにしたがって進んでいく映画。

ドキュメンタリーだって、監督の意図で編集されるけど、もう少し事実で語られると思うんだけどな。
 特にひどいのが、他のレビューでも触れられているが、サメ漁猟の映像。きちんと調べて事実を挟み込んでの批判ならかまわないが、噂をそのまま”ドキュメンタリー”として表現するのは詐欺・捏造ではないのか。そしてそれがこの映画で一番監督が訴えたい部分であるならば、映画そのものが”ドキュメンタリー”とは呼べないのではないか。
 最近、”やらせ”で告発されるTV番組があるが、この映画もそれと同列。

批判が悪いわけではない。
 ただ、批判するならもっとちゃんと調べてほしかった。せめて、ねつ造したり、自分の主張に都合のよい映像だけを集めて編集したりしてほしくなかった。やらせや都合のよい映像だけを集めて編集するのなら”ドキュメンタリー”は名乗ってはいけない。

そんなやらせの捏造映画を500円で子どもに見せるとは。
 稼げればいいんだよってこと?その思想が環境破壊に繋がっているのに?

そんなやらせの捏造映画が「文部科学省選定」になっているとは。
 真実なんてどうでもいい、雰囲気に流されて、”らしく”見せられれば、事実に基づいて考えなくてもいいってこと?
 いつまでたってもディベートができる人材が育たないわけだ。

そんな人材ばかりの日本はどうなっていくのだろうか?

(私と同じように違和感を持っていらっしゃる方がいらっしゃるので嬉しくも、ほっとしました)

とみいじょん