劇場公開日 2010年1月16日

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「ネタバレ後が長すぎる!中盤以降の組み立て方には、興ざめしました。」今度は愛妻家 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ネタバレ後が長すぎる!中盤以降の組み立て方には、興ざめしました。

2009年12月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 妻を失った男の今度こそは、という万感を綴ったドラマでした。
 タイトルの『今度』には、深い意味が込められています。その深いところはネタバレになるので明かせません。
 人は、大切な人を失ってみなければ、どんなにその人を自分が必要としていたか。そしてその存在の大きさに気づけないものだと本作で思い知らされました。
 アラフォーを迎えたカップルで、近頃倦怠気味で子作りにも興味が萎えてきたような方には、いい意味で反面教師となる作品です。

 北見俊介を演じるトヨエツは、ダメダメ男ぶりを発揮。『犯人に告ぐ!』で見せたいぶし銀のような男臭さを封印して、どこにでもいそうな感じを役作りしているところが素晴らしいと感じました。

 またさくら役の薬師丸ひろ子も、どんなに年を取っても変わらない愛嬌のある妻ぶりを好演。さくらを失った俊介の喪失感の深さを引き出していました。

 すっかりマカネリ化した夫婦間では、争いは絶えませんでした。でもファンイダー越しに俊介が撮影するさくらの映像には、互いの愛情がしっかり見て取れるところが、なかなかいい演出です。
 また冒頭の俊介と妻さくらの沖縄旅行のシーンでは、セリフなし・駒落しの活動写真風にコミカルに描かれているところも素敵でした。
 そして俊介とさくらのやりとりもまるで夫婦漫才のようにウイットに富んで笑わせてくれました。

 但し、さくらが箱根旅行に出かけたまま失踪してしまう中盤以降の組み立て方には、興ざめしました。
 さくらの存在を俊介の妄想として描くところが長すぎると思うのです。やっぱりネタバレは、手際よくぱっと、ホントはこうなんだよと明かすべきでしょう。それとさくらの存在については前半のシーンと後半の展開に明かに辻褄が合わないところが出てしまいました。
 それでも後半は、ある事故が明らかにされて、さくらの失踪の本当の理由が明らかになります。その後の嗚咽する俊介の後悔の想いにすすり泣く観客は結構いました。コミカルのようで実は泣ける作品だったのです。

 行定勲作品には、構成面であとちょっとという感じをいつも感じてしまいます。本作もきっとも見てきた人の受け止め方で、大きく評価が上下しそうな作品です。

 ところで俊介に行きつけのオカマバーのオーナー役(実はもっと縁深かっただが)を、石橋蓮司が熱演していました。俊介との珍妙なやりとりもぜひご注目を。

流山の小地蔵