マイマイ新子と千年の魔法のレビュー・感想・評価
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昭和30年の子どもたちとの地続き
初めて鑑賞したのはだいぶ前だったが、ピカデリーでの上映で感想を書いてなかったのを思い出した。
昭和30年と約1000年前、平安の防府を、想像の中で行きつ戻りつ。でも派手な物語はない。
ダム遊び、想像しあう遊び、自分の子どもの頃の時代とも全然違う時代の子どもたちの遊びがなにか沁みる。
観るたびに少し温かい。
子ども向けでもファンタジーでもなかった
良い噂は聞いていたし「この世界の片隅に」がとても良い作品なので、片渕須直監督の本作も興味はあった。
しかし、子ども向けそうなこと、ファンタジー色が強そうなことなどでなかなか観ずにいた。
蓋を開けてみれば、思ったほどファンタジーではないどころか、全くファンタジーなどではなく、時代のこともあって「ALWAYS三丁目の夕日」の、地方版、子ども中心版といった感じだ。
そして、噂の通り良い映画だったと強く感じた。
多くの映画監督には独自のカラーというものがある。雰囲気であったり、多用する技法であったり、脚本も自ら出掛ける場合、内容にも特色がある。
アニメーションの場合でも主に「映画」を主戦場にしているならば映画監督だ。
片渕監督にもやはりカラーはある。
「この世界の片隅に」で、すずさんの描く絵が実際に見えるものと重なるシーンなどが実にアーティスティックだが、本作においても同じような表現をしている。
二つの場面、本作では作中の現在と千年前をシームレスに移行させることで、あたかも同一の場面かのように表現する。観ていて場面切り替えによる引っ掛かりがなくなるのはある種の爽快感がある。
そして、主人公が妄想する過去として、その場に千年前を登場させてしまうのも印象的。
ほとんど関わりのない千年前が「今」かのように、千年前のお姫様が今の誰かのように錯覚できるのは素晴らしい。
この「続いている」感覚は、本作のテーマとも合致する。誰かが覚えていれば、誰かが思いを馳せれば、その人はまだ存在している。
改めて素晴らしい作品
久しぶりに観てみました。
まず美術ですね。田舎街が、その田畑がすごいきれい。
それと音楽が素晴らしい。
そういえばガス式冷蔵庫を知ったのもこの作品だった。
今思えば何もない田舎町。
そんな中で、自然や空想や友達と共に成長していく物語。
どこか懐かしく、どこか古めかしい。だけど何だか暖かい。
また、エンドロールのコトリンゴがすっごいぴったりなんですよね。
改めて素晴らしい作品です。
青い麦の海
2022年5月31日
映画 #マイマイ新子と千年の魔法 (2009年)鑑賞
昭和30年代の山口県防府市を舞台に、お転婆で空想好きな少女の新子と、東京から来た転校生の貴伊子との友情を描く
#片渕須直 監督作品だけに、#この世界の片隅に を彷彿させる感じですね
夢みる少女
想像力豊かで夢みる少女は「赤毛のアン」を思い出させる。住んでいるところが平安時代の国衙だったから、想像の世界は豊かに広がる。この展開に最初はどぎまぎするが、引き込まれる。子供が主役だが、大人が見てもキチンとしている。また見てみたい。
昭和30年代の地方はまだこんな感じだったんだ。道は舗装されていなくて、緑も川も自然のまま、かけっこや川遊びの放課後。まだテレビもなさそうだし。時代考証は間違っていないとすると、子供たちの自然さ・純朴さは東京などの都会とは5~10年違う印象。
防府の風背景が素晴らしい
ただ写実するでなく、昭和30年代と古代の風背景を現代の街並みと交差させ描く。
少年少女の想い、複雑多岐に絡み合う出来事に拠る成長譚。
短絡的で一本線な昨今のアニメ作品と一線を画すアニメーション作品。
タツヨシがかっこいい!
心が温まる映画。アニメーションとはかくあるべし!
昭和30年代の山口県を舞台に、空想好きな女の子、新子と内気な転校生、貴伊子の日常を描いたアニメーション。
『この世界の片隅に』を鑑賞した結果、片渕須直という監督の才能に惚れ込んでしまいました。なので、片渕須直監督の前作である『マイマイ新子』も鑑賞してみることに。
本作を観て、片渕須直は素晴らしいアニメ監督であると再認識。
粗雑濫造が横行するアニメ界において、このような大人から子供まで楽しめ、感動できる作品を作ってくれる監督が正当に評価されていることは、いちアニメファンとして大変嬉しく思います!
本作は『この世界の片隅に』よりも前の作品です。しかし、昭和20年頃が舞台だった『この世界の〜』に対し、本作は昭和30年代が舞台となっているため、むしろこの作品を後に見たことによって「あの戦争の時代からわずか10年程で、こんな平和な時代になったんだなぁ」としみじみ思い、本作に愛着が湧きました。
絵の感じは完全にジブリ風です。
元々高畑・宮崎コンビに従事していた方なので、ある意味では正当な絵柄と言えるかと思います。
全体の雰囲気も『となりのトトロ』風。田舎に引越してくる少女、迷子になる妹など、どこかで見たことがあるシーンだなと思わざるを得ません。
竹を割ったような性格の新子は見ていて楽しいし、新子と貴伊子が交流を深めていく過程はほのぼのしますが、正直前半は退屈。特に事件が起こるわけでもなく、田舎サイコー!的な描写が続きます。
しかし、後半になるにつれて、物語は思いもしていなかった展開に発展していきます。
少年・少女のやり切れない思いの爆発。1000年の時を隔て、不思議な交わりをする少女の記憶。非情な現実に面しても、心の思うままに世界を創造することこそがそれを乗り越える武器になるというメッセージ。
渦巻くエモーショナルな展開の連続に、知らずと涙が頬を伝っていました。
暗闇の中で新子が貴伊子に伝える本当にささやかな告白が、作品をビシッと締めてくれます。
牧歌的でありながら、残酷な現実がたしかに存在する世界。子供時代が有限であることを伝え、その中で育まれるイマジネーションこそ、現実世界の荒波を渡っていく船となり得ることを教えてくれる美しい作品です。
子供向けな雰囲気ながら、文学的な作品構造も有しており、かなり歯ごたえのある映画でした。
小3の夏。少女たちの成長に泣かされる
小学校3年生の夏、ちょっぴり成長した子供たちにホロっとしつつ、心が温まる作品だった
舞台は昭和30年代の山口県の田舎町
主人公の新子は、東京から引っ越してきた転校生の貴伊子と仲良しになり、夏休みになると、彼女たちは、近所の畑や川で遊ぶようになる
そんな彼女たちを見ていると、ゲームやスマホがなくても、外で走り回って遊んでいた自分の子供時代を思い出した
それだけで、ノスタルジーを感じて切なくなる
しかし、新子は、他の子たちとはちょっと違う
その町に、千年前にあったという都に想いを馳せ、その当時に生きていた同世代の姫と思いをリンクさせるのだ
それは、新子が大好きなおじいちゃんから話を聞いて想像した世界
千年前は、どんな生活をしていたのか、姫はどんな風に遊んでいたのか、想像するだけで、新子は楽しくなって、「千年前ごっこ」をしちゃうような子供だった
この物語は、原作者 #高樹のぶ子 の自伝的小説が元になっているらしい
ということは、高樹のぶ子さんも、子供時代には、千年前の都に想いを馳せていたということなのだろう
友達の貴伊子も言っていたけど
新子の想像力はすごいなぁ
と思った
千年前にここに何があって、どんな生活をしていたかなんて、私は考えたこともない
新子がそれほど想像力豊かだったのは、きっと、一緒に暮らしているおじいちゃんの影響なんだろうなぁと思った
そこは、現代の核家族が失ってしまったところだ
そこは、おじいちゃんやおばあちゃんたちと一緒に暮らす生活が、子供たちに良い影響を与えるんだなぁと感じさせたところだった
とはいえ、彼女たちの夏休みは、楽しいことばかりではない
出会いがあれば、別れもあり、死を身近に感じることも起きてしまう
そういう経験を通して、彼らは大人の世界を垣間見て、ちょっぴり成長するのだ
私は、そんな彼女たちの成長に泣かされてしまった
楽しいこともあれば、悲しいこともある
子供だから理解できないこともある
その中で登場する金魚のひずるは、未来への希望だ
どんなに辛いこと、悲しいことがあっても、信じて願い続ければ、神さまは、彼女たちの願いを聞いてくれるのだ
だから、きっと大丈夫
夢は大きく持とう!
昭和時代を懐かしみつつ、彼らの成長にホロっとし、最後は心が温かくなる作品だった
ほんわかした作品を観たい時におススメの作品
想像と空想の宝に自然と涙溢れる
・子供が大人の世界に触れるとき、またひとつ成長する
・戦後10年の山口の田舎の新子が土中のショウケースにグリコのおまけをしまう行為と、1000年前のお姫様がひとりで遊ぶ人形のリンク
・都会からの転校生の貴伊子が香水をつけて後悔してから、方言を話し新子より早く走るまで馴染む過程が細やか
・秘密のダム作りと金魚の飼育と死の立ち会い
・極端に目線を落としたショットが特徴的
・エンドロール後のラストカットは2匹の蝶々がとまるタンポポの花が揺れている画
新子の声が好きでした
当然の流れのように、『この世界の片隅に』にいたく感動して、こちらを観ることになったのでした。
しかし、私的には、ちょっと惹き込まれなかったかな、と。
なんでしょう、『この世界の』と同じく主人公の声は抜群だったんですよね。芯があるような声に、新子の伸びやかさを感じちゃいました。
でも、でも、『この世界の』で感じたものには、ちょっと届かなかったかなぁ。やっぱり子どもの世界の伸びやかさと、現実の世界の悲しさとのコントラストが、もう一歩だったのかな、とも思うんですよね。そのコントラストは明瞭にひとつの主題でもあるんでしょうけど、そこが十分に感じられなかったかなぁ、と。
ある意味、伸びやかすぎなのかな、と感じましたですね、はい・・・すいません・・・。
「絵」は世界一。ジブリを遥かに凌ぐ。
「この世界の片隅に」を観てからこの映画を観た
多分、「この世界の片隅に」を好きになった人は、「マイマイ新子と千年の魔法」も好きになると思います。世界観がとても似てる。
まず何と言っても、この映画は映像(正確には映像というか絵なんですが)が凄い。
地平線の彼方まで一面敷き詰められた麦畑が風になびき、雲ひとつない青空に太陽、その中を子供が走ってる。合わせて曲が流れる。
それだけでこんなに凄い絵になるとは・・・。子供がただ遊んでるだけ。ただそれだけ。
この映画は最大の見せ場がそれである。面倒臭い説明は一切なし。もう引き込まれてる。日本のアニメは本当に凄い。
この映画、さらに一線を画するというか次元が違うというか、「絵」という点ではジブリ、押井守等を遥かに凌いでる。
ジブリ映画は、大人が観た子供の世界「子供の世界ってこんな感じでしょどうせ?(笑)」みたいな感じ。だから観てる側も、潜在的に内心こんなのあるわけねぇ(笑)って思っている。だからジブリ映画の絵は、どこか子供っぽくダサい。注)別に批判してるわけじゃなくて、この「マイマイ新子と千年の魔法」と比べたら子供っぽくダサいというだけです。私はジブリ大好きです。はい(笑)。
「マイマイ新子と千年の魔法」は、子供が観た子供の世界。とてもリアル。だからこそスタイリッシュ。「絵」はド田舎なのに、超カッコ良い(笑)。否、カッコ良いという表現は適切ではないか。生きてる。生々しい。本当にそこにあるみたい。畏敬の念すら抱く。言い過ぎか・・・。子供の映画なのに、子供っぽさが全然ない。こんなにスタイリッシュな「アニメ」を、私は今まで観たことがない。
押井守の「攻殻機動隊」みたいなハードボイルドアニメは、確かに「リアル」っぽく見えるけど、実際、あれは「リアル」っぽいだけで、「これが俺の考えたカッコイイ未来だぜ。カッコイイだろ。どう?」みたいな感じで、キザ、なところがダサく見える(笑)。注)攻殻機動隊みたいなハードボイルドアニメも私は好きです。
物語はオーソドックス。
普通に暮らしていた主人公が、汚く暗い大人の世界へ旅立ち戦い、ちょっと成長して帰ってくるという、良い話。
主人公は妄想好きの女の子。おじいさんから1000年前の昔話を聞かされ、いつも想像している。1000年前の人たちはどんなだったんだろう?
この映画も、昔の人を「想像する」ということから、まずは始まっている。想像力の尊さを教えられた。
(近年のARやVRは確かに凄いですが、人間の想像力が劣ってしまわないか不安だ)
じゃんけんもってすっちゃんほい
EDこどものせかいが超名曲。歌詞がリンクしてるだけじゃなくて、曲調で映画の中の美しい情景がゆっくりと思い出されてる。コトリンゴのセンスの真骨頂だなと思います。
笑って遊ぶ子供の世界のすぐ隣に大人の世界があって、ひづる先生が妻子持ちと恋愛してて幻滅したり、タツヨシの父が自殺したりと子供から見える世界はなんだか酷い。
大人の世界に新子とタツヨシの2人だけで足を踏み入れるところは良かった。ガス冷蔵庫なるものがあることをこの映画で初めて知りました。
昭和年代女子向け?
「この世界の片隅に」の前作はいかほどのものか?
と言うことで行ってきた(地元じゃないので長距離走行)。
お母さん方に受けがいいのか、親子連れが数組。子供は退屈そうな反応に見受けられた。
実際、昭和30~40年代に共感できる大人の女性向けな印象。
昭和40年男には微妙な感じに思えた。
背景描写は「この世界の片隅に」より濃密に描かれているようだ(原作の違いもあろうが)。
キャラクターと背景描写はバランスが良く、個人的にはアニメーション表現として最良と思われる(キャラクターの描写が平板なのに背景は超絶写真的表現とか・・・ちょっと、違和感を感じるので)
ストーリーは単調で、確かに流行らないかなと。
ラストはちょっと寂寥感が漂う。
ダムづくりは、なかなか楽しい・・・が、40~50年代だと、もう無理だったかも(近所の農家のおじさんに怒られそう)。
ウィスキーボンボンであんなに酔えたかな?と言う気も。
「大人の事情」が子供の口で語られるのが、もうちょっといい演出がなかったのか、とも思う。
片淵監督の名刺代わりの作品として良作と思えるが、作品単独で考えた場合、やはり商売的に厳しいと思われる。
ただ、忘れられていい作品とは思えない。
鑑賞した上映館は、北海道でも辺鄙な場所(失礼)で、この時期の上映に頭が下がる。
千年前も昔も今も、子供たちは一生懸命遊ぶ
著者・高樹のぶ子の少女時代をベースにした小説を、「この世界の片隅に」の片渕須直監督がアニメ映画化した2009年の作品。
昨年末、「この世界の片隅に」を観た後、本作も再見しようと思いつつ、今頃になってしまった。
公開時は全く話題にもならずヒットもしなかったが、観た人たちの間では熱心に支持された、隠れた秀作。
本作の評価の高さ、平凡な営みの尊さ、また、主人公の女の子の母親が生きた少し前の時代を想定したのが「この世界の片隅に」とも言われており、色んな意味で「この世界の片隅に」へと繋がった起点とも言える作品でもある。
昭和30年、山口県防府市。平安時代、この地は“周防の国”と呼ばれ、今も遺跡が発掘されている。
おでこのマイマイ(つむじ)がトレードマークの女の子、新子は、祖父からよく聞かされている千年前の町を空想しながら、毎日を明るく楽しく過ごしている。
そんな時、東京から転校生がやって来て…。
子供たちが元気いっぱいに遊ぶ姿や成長がストレートに描かれている。
引っ込み思案だった転校生・貴伊子だが、自由奔放な新子の影響を受け、すぐ打ち解け、皆で遊ぶ日々が平凡だけど何とかけがえのないものか。
子供視点の作品なので子供向けかと思いきや、大人の方こそ心に響く。
同時代、自然に溢れた田舎町で過ごした方が見れば、堪らなく郷愁を誘う筈。
皆で村中を冒険したり、池や川やダムを作っては、そこを子供たちだけの憩いの場にしたり…。
自分は町中で育ったが、それでもちょっとした原っぱや見慣れぬ場所なんかがあったりすると、ちょいと探険してみたり、駆け回ったり、泥だらけになって遊んだり…。
今じゃすっかりインドア派になっちまったが、昔は子供らしく遊んでたもんだ。
その頃の自分と重ね合わせ、すっかり懐かしい気分に浸ってしまう。
そんな無邪気な子供たちに暗い陰を落とすのが、大人たち。
新子らが通う小学校の保健のひづる先生。いい匂いのする美人で憧れの先生。
突然結婚で辞める事になるが、ある事情があって…。
新子ら遊び仲間の頼れる兄貴分・タツヨシ。タツヨシの父は警官で剣道の達人、皆から一目置かれている。
ある悲劇が起こり、さらにあらぬ噂が…。
毎日、また明日遊ぶ約束をする子供たち。
子供たちの明日が大人の不条理によって奪われようとする。
新子は言う。
私たちの明日を返して、と。
子供たちの今も、明日も、その時その時、一瞬。
それが奪われていい筈がない。
ユニークなのが、時折挿入される空想上の千年前の子供たち。
千年前でも、昔も、今も、子供たちは変わらないのだ。
一生懸命遊び、子供たちは成長していく。
温かみのある映像が美しく、音楽も心地よい。
子供たちの笑顔のような、ほっこりする余韻が続く。
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