ウォッチメンのレビュー・感想・評価
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誰がヒーローを監視するのか?
ここ十年くらい、アメコミヒーロー映画の躍進は凄まじいですよね。主役級の大物俳優を多数起用してシリーズが何作も発表され、興行収入ランキングでは常にトップに躍り出る。「アメコミ映画」という一つのジャンルとして完全に確立されているように感じます。
そんなアメコミ映画の中でも、かなり異質な作品として度々名前を見掛ける本作。「アメコミ映画最高傑作」と本作を挙げる方もいらっしゃったりして、かなり期待値は高かったです。
結論から言えば、かなり楽しめました。キャラクターの個性も光っていましたし、ストーリーも面白かった。冒頭でいきなりヒーローである「コメディアン」が殺される展開から始まるのも、ワクワクして素晴らしかったと思います。
アメコミ映画に対して皮肉を込めて鼻で笑うようなメタ的映画である本作。アメコミ映画を始めとするヒーロー映画の「あるある」に対する皮肉っぽい要素が多く盛り込まれており、ちょっと笑っちゃいました。
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舞台は1985年。アメリカとソ連の緊張状態が続く中、アメリカ中がいつ起こってもおかしくない核戦争の脅威に怯えていた。かつては戦争の裏で暗躍し、人々を見守るヒーロー集団「ウォッチメン」のメンバーとして活躍していた”コメディアン”ことエドワード・ブレイクが何者かに殺害される。ヒーロー狩りが行われていると察知した「ウォッチメン」のメンバーたちは、自分たちの身を守り犯人を突き止めるため、各々の行動を取るのであった。
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本作は2009年の作品なんですが、ここ2年くらいで頻繁に名前を耳にする機会が増えました。アマゾンプライムで配信しているオリジナルドラマ「THE BOYS」と共通点が多く、YouTubeなどでのレビュアーさんがよく「THE BOYS」と本作を比較して論じていたりします。私自身も「THE BOYS」は大好きな作品で全話鑑賞済みですので、本作も好みに合っていましたね。
かつては陰からアメリカを支え、数々の戦争の立役者となっていたスーパーヒーロー集団の「ウォッチメン」が、国の政策によって解体されてしまう。超人的能力や正義が国家権力の下に運用されているのは、大企業に雇用されマネジメントされるヒーローを描いた「THE BOYS」に通じるところがあります。
「ウォッチメン」のメンバーたちも決して一枚岩ではなく、それぞれが自分たちの理想のためにバラバラで行動しているわけです。ウォッチメン解体前の行動、解体後の行動。それぞれのキャラクターの個性が垣間見えます。個人的には、ロールシャッハが一番好きですね。各キャラクターの個性があまりに濃すぎるので、友達とどのキャラが好きか話をするだけでも面白そうです。
また、この作品は他のヒーロー映画でよく見る「あるある」を皮肉ったような描写が多いところも特徴です。個人的に爆笑したのは、ヒーロー狩りの黒幕が判明した時にこれからの計画を説明するところですね。「その計画止めてやる」と意気込むヒーローたちに対して「止められる可能性があるのにベラベラ説明するわけないだろ。もう計画は35分前に完了した。」って返すシーンですね。爆笑しました。
ヒーロー同士のいざこざや、私利私欲のために自分の能力を行使するヴィラン的立ち位置のヒーローもおり、そういうところも最近流行っている作品に似ている部分もあるなと感じます。
原作は1986年発表の作品というのが驚きです。全く古臭さを感じないどころか、時代を先取りしたようなストーリーだったので、非常に新鮮な気持ちで鑑賞することができました。
「THE BOYS」好きな人にはオススメです。ヒーロー映画好きな人にもオススメです。とりあえず観てください。よろしくお願いします。
And i'll whisper "No"
お気に入りの1本です! 上映時間が長いのも僕にとっては嬉しいです(^-^) 「一般のファンからは不評で、原作ファンからは好評」なんて聞いたことがありますが、僕は一般のファンの方ですが、好評です(笑) 実際の出来事にウォッチメンが関わっていたというのは面白いですね! ロールシャッハはいい声してるからナレーションはバッチリ! 他の映画のレビューでも書きましたが、食事のシーンが好きなもので、ロールシャッハのお豆の缶詰やナイトオウルのヌードルが美味しそうでした(笑) マリン・アッカーマン素敵(^-^) 他の方が書いていた「誰目線で観るかで印象が変わる」上手いこと言いますね~(笑)
う~~よくできたアメコミ映画だ!
政治的かつ破滅的なのに、あくまでもアメコミの体裁を崩していないのが、素晴らしい。アクションにも見とれてしまうが、残虐描写も手を抜いていない。クラシックやフォークソングが織り交じり、アメコミらしさも忘れていない。
さらには、正義とは、という大テーマに対しても答えは出さずとも、様々な正義のぶつかり合いを魅せてくれる。
ロールシャッハがとにかく格好いい。最もヒーロー像から遠いように見えて、実は一番熱い正義の持ち主で、社会の底辺を見てからは、悪人にならどんな残虐な仕打ちも惜しまない。
そんなキャラにあのマスクと声がぴったりで、渋くて格好いいんですわ…。生い立ちもダークヒーロー感漂っていて、死に際までも潔い。(正直、死ぬシーンは号泣した)
他にもヒーローが数人でてくるが、誰もかれもがキャラがたっていて、それぞれの正義観も胸が痛いほどわかるのです。ひとりひとりに正義があって、それには犠牲も伴っている。ありあまる正義はいつか悪を包括してしまうし、それがだれかの敵にならざるを得ないときもある。
それが、だれもが”平和”を目指して進む姿だと思うと、こんなにも胸が痛くなるのか。そして、それが結局のところ人間のせいであるという事実。
結局、人間って愚かだけども、生命って素晴らしいし、宇宙の中でも輝いているよね、ちっぽけで邪悪だけどね。っていう矛盾が常に平行してある感じが妙に納得。
この映画もなかなか考えることが多そうだ。
ぱっと浮かんだだけでも2つ。
①ロールシャッハは死ぬべきだったのか。
②コメディアンの存在意味とは。
少し考えてみたいと思う。
リアルヒーロー
某ドラマの警察官も公務員!というセリフを思い出させる作品。世界を核戦争から救うために超人たちが立ち向かう映画だ。嘘だ。
ヒーローという重圧を耐えうる人間は元から狂人なのかもしれない。もしくは狂人としての振る舞いがヒーローのように映るだけで、この世にそんなものは居ないのかもしれない。だから最後には、皆ある種の狂気の中で死んでゆく。ダークヒーローではないリアルヒーローの話なのだ。
語り部であるロールシャッハは友人宅へ鍵を破壊して不法侵入したり、犯人を見つけるために参考人の指をへし折る要注意人物なので、明るい勧善懲悪ヒーローものを見たい方は見ない方がいい。
精神的超人・ロールシャッハ
まずDCヒーローの傾向として、
強ければ強いヒーロー程メンタルが弱くなる傾向になります(笑)
そんななかロールシャッハは
バットマンよりもメンタル面では超人であり、
絶対的正義の元でヒーロー活動をしています。
では、皆さんに問います
正義のヒーローの定義ってなんですか?
悪を挫き、弱きを助け、安寧を求める
どうでしょうか?
どれか当てはまりましたか?
勿論、当てはまる事もありますし、
当てはまらない場合もあります。
正義とは力の方向性であって、
力を押し通した時に、価値観が合えば正義、
合わない時に悪になるのです。
そしてこの映画では
統制の取れていない角のたった世界に
強大な必要悪が必要悪を作り上げる事で
纏まらせる事で安寧を作り上げます。
その必要悪に対してロールシャッハは
たった一人で立ち向かうんです。
確実に、目の前に死が立っていても、
無実の人が死んで良いわけがない
そんな正義がまかり通って良いわけがない
この映画を観ることでわかります。
バットマンだって、スーパーマンだって
スパイダーマンだって、キャプテンアメリカだって
他にもヒーロー活動をしている者は沢山いますが、
これだけははっきり言えます。
間違いなく、本当のヒーローは
ロールシャッハだけであると、
そして彼より愚直で孤独な者は存在しないと。
彼は間違いなく私の中のヒーローです。
彼以上に、ヒーローの基盤となる者はいません。
原作のナンセンスな部分をマイルドに、そこそこの映画に仕上がっている
原作ファンです。ほぼ原作に忠実に作ってありますね。
そこそこ面白い作品に仕上がっています。
原作と映画で決定的に違うのはオジマンディアスの計画の中身ですね。私がこの映画に期待したのはその部分の映像化だったので肩透かしを食らいました。
映画では自分が第3の脅威となることで各国を団結させるというまともで、現実的な計画でした。
コミック版での計画ははっきり言ってナンセンスです。実現可能とも思えません。あのコメディアンが”悪質な冗談”だと絶望するほど…。
でも、あのオチあってこそのウォッチメンでしょう。
映像化は難しかったんだと思います。本当に馬鹿みたいな計画ですから。それでもスタッフにはチャレンジして欲しかった。そこだけ残念。映画全体としては可もなく不可もなくって感じ。
人間らしいヒーローもの
ウォッチメンは今までのヒーローものに比べたら、人間らしい苦悩が描かれているのかもしれない。最終的には世界平和のためには犠牲にするものがあるという話だったのかな。名作と言われる作品なんだろうけど、私には理解できずなかなか話にのめり込めなかった。
正義の偶像(ヒーロー)、偽りの虚像(平和)
まだDCフィルム・ユニバースが始まる前、2009年にザック・スナイダーが同名グラフィックノベルを基に手掛けたコミック・ヒーロー映画。
アメリカ近代史の数々の出来事や事件。その陰には、ヒーローたちの存在があった…。
第二次大戦前に結集した初代“ミニッツメン”。
時が流れ、ヒーローたちが入れ替わり、80年代名を轟かすは、“ウォッチメン”。
コメディアン、ロールシャッハ、Dr.マンハッタン、ナイトオウルⅡ世、シルク・スペクターⅡ、オジマンディアス…。
既存のヒーローを彷彿させたり、見た目も個性もインパクト大。
力を合わせ、巨悪と戦う!
…なんて話では断じて無い!
後にスナイダーが手掛けるDCユニバースの原点を見て取れるほど、ダークで重苦しい。
そもそも、彼らを“ヒーロー”と呼んでいいべきか。
コメディアンは民間人にも銃口を向ける。
マスクの染み(?)が不気味に動くロールシャッハはダークヒーローと言うより、ヴィランにしか見えない。(でも、個人的にウォッチメンの中で一番好きなのはロールシャッハ)
誰よりも強烈インパクトのDr.マンハッタンは神の如き力と存在で、その誕生は悲劇。
各々何かしら重荷や闇を抱え、関係も複雑。
でも、これがヒーローのリアルかもしれない。
普通の人とかけ離れた能力を持った悩める内面の者たちの集団。
アベンジャーズは理想的なファンタジーに過ぎない。(“ヒーロー映画”としとは最高だけど)
話は…
何者かに殺されたコメディアン。
世界では核戦争の緊張高まる。
そこには、恐るべき陰謀が…。
とにかくエピソードが多く、散漫し、巧く纏まっているとは言い難い。
各ヒーローたちも充分に見せ場が儲けられているとは言えず、どうしてもロールシャッハとDr.マンハッタンしか印象が残らない。(Dr.マンハッタンなんて彼一人で単独映画が作れる)
ヒーロー映画としては面白味に欠けるが、訴えるものはなかなかズシンと響く。
陰謀の黒幕は、仲間の一人。
だが、決して悪の道に堕ちたとか、そんな理由じゃない。
彼には彼なりの、正義や平和の考えや行動。
一人は真っ向から反対する。どんな時でも正義は貫くべきだ、と。
どちらの言い分にも是非はある。
仲間内でも天秤に架けたように揺れ動く。
彼らが取ったのは…
この“平和”を守る。
確かに真っ当ではない。
“正義”という矜持を失うのも厭わない“平和”の妥当。
犠牲を出してでも。
真実に蓋をし、まるで神か何かのように世界を守り、平和を固持する。
彼らは、ヒーローか。
ならば、ヒーローとは何だ? その存在の意味は?
ロールシャッハ記にはこう記されるだろう。
“20XX年。X月X日。
今日も偶像(ヒーロー)が虚像(平和)を守った”
かなり長いしつまらない!!
かなり長いしわざと小難しくしてあってヒーローものなのに心躍る事もなくつまらないです。米ソ冷戦は国際金融資本による八百長ですが、仮にもヒーローを名乗る人たちが誰一人として真相を見抜けなかった事は今となってはおかしいです。原作が古いとはいえ2009年の映画なので企画にギリギリGOが出てしまったのでしょう。アメリカはベトナム戦争で負けましたが、ニクソンの要請でDr.マンハッタンが参戦して皆殺しにした事になっているのは、アメリカらしくて笑えます。終盤は悲壮感がありますが、この作品でザック・スナイダーがDCエクステンデッド・ユニバースの製作に抜擢されたのなら、出る作品が軒並み小難しくて一般向きではないのも納得です。
Tonight, a comedian died in NY. ザック・スナイダー監督、執念の映画化
原作はアメコミ界のビックネーム、魔術師アラン・ムーアが1986年から87年にかけて発表したグラフィック・ノベルです。1986年といえばまだ冷戦中。当時よくこんな物語作ったなぁと思います。
これまで数多くの監督が映画化しようとして失敗してきた作品なのですが、それをザック・スナイダー監督が執念で映画化。やー、面白かったです。ザック・スナイダー監督がこの「ウォッチメン」を大好きなのが伝わってきますね。原作は長いので色々とはしょってありますが、原作をほぼ忠実に再現しています。超リスペクトしてるわ。難解な原作を上手くまとめた印象です。個人的にはアラン・ムーアの作品自体苦手なのですが、映画は分かりやすくなってて良かったですね。エログロはちょっとしたご愛嬌でしょう。
この物語はいうなれば、かの名作「ダークナイト」と同じオチなんですよね。最終的に偽りの上に平和を築くって所は(というかクリストファー・ノーラン監督がパクった?)。「バットマン」というネームバリューのあるキャラクターがいないので、どうしても「ダークナイト」より地味な印象になってしまうのは仕方のない所ですが、ロールシャッハという妥協しないキャラクターがいることで終わりがひと味違います。
作品は長いので観る場合は気合い入りますが、それでも何度観ても楽しめる作品です。万人向けではありませんが、王道アメコミ映画に飽きた方には是非お勧めです。
面白くない。 だけど音楽が良い、無駄に良い笑 エロイシーン多いし、...
面白くない。
だけど音楽が良い、無駄に良い笑
エロイシーン多いし、無駄にグロ描写あるし、
途中からB級だな〜と一気に見る気なくしました
悪はいないけどそれぞれの正義は貫いている
多くの犠牲を出してでも世界平和を望むべきという考えが良しとされちゃダメなんじゃないの???んん?って見てたら最後に日記が出版社に送られて終わり、ちゃんと真実を知らない歪んだ正義は良くないで締めくくられあー良かったというか安心した笑
二度は見ぬ( ̄▽ ̄;)
ダークナイトと同じレベルで素晴らしいDC映画
なぜ今まで観てなかったんだろう。
アメコミは全然おしゃれなだけの漫画じゃない。
・登場ヒーロー
ロールシャッハ(最もヒーローらしい精神を持つ)
コメディアン(誰よりも強い力を持つ)
Drマンハッタン(話の中で、超能力を持つ唯一の人)
ナイトオウル(ヒーローらしい小道具と武器、乗り物を持つ)
ジュピター(ただ1人の女性。マンハッタンの彼女)
オジマンディアス(誰よりも素早い)
・あらすじ
アメリカがベトナム戦争に、ヒーローの力で勝利した後の話。ヒーローの力は脅威となっており、「ヒーローは悪を勝手に裁いてはならず、一切のヒーロー活動が禁止」される法案が制定される。一方で、ソビエトへの核抑止力として、ヒーローがその役割を担っていた。
ある日、力が一番強いはずのコメディアンが他殺体となって見つかる。油断したわけでもなく、完全に力負けして殺されたのだ。ロールシャッハ(語り手)は、これを「ヒーロー狩り」だと判断し、捜査を始めるが、、、
これ、本当にアメリカが作った映画なの?これを少年が漫画で読んでたの?理解できたの?
すごすぎ。よく出来てる。
映画の最後までロールシャッハはロールシャッハらしく、精神を曲げないし、終わり方なんか、大人力が無いとついていけないよ。
ダークでメッセージ性のある異色ヒーロー作
スローを使った美しいOP(スマイリーフェイスに血痕)
分かりにくい登場人物
犠牲の上に成り立つ平和(ヒーロー殺人黙認)
スマイリーフェイスの服にケチャップ
ロールシャッハの自伝発見エンド
何を以て正義なのか悪なのか問う作品
現実の方がよっぽど残酷
「罪の無い何百万人が死んだって
残りの数十億人を救えるんだったら良いじゃないか」
オジマンディアスはそう言ってニューヨークの人々を大量に虐殺する。
酷い話であるが、
これはまさに第二次世界大戦での日本への原爆投下の暗喩であり
戦争終結の為、被害拡散を防ぐ為にした事だというトルーマンの言い訳と同じだ。
(原作コミックではその件への言及個所も多い。)
もう現実に起きちゃっている話なわけで。
現実の方がよっぽど残酷なわけで。
こんな残酷な正義がまかり通っている現代で
どんな正義のヒーローを描けば良いのですか?
というのがこの原作コミックのテーマであろうか。
原作者の目的は政治や社会批判ではなく、
素直に純潔な正義を信じていれば良かった時代と違って、
今のヒーロー像はこうなりますよって事が言いたかっただけだと思う。
そもそも、現代の正義って何ですか?
読者の望むヒーローって何ですか?
ヒーローなんて望んでいないんじゃないですか?
って事が言いたいのだと思う。
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映像化不可能といわれたコミック「ウォッチメン」、
ザック監督が果敢に挑んだわけだが…。
映像化にあたって
本当に残酷な部分…ニューヨークの惨状などの描写は避けた印象がある。
メジャー作品として世界に配給されたのだからそれは避けて当然なのかもしれないなあとも思う一方で、
その部分をサラッと流せるザック監督がちょっと怖いとも思うんである。
(原作のイカ爆弾は話の核だからなあ。)
その他、原作とほんの少し違っていて気になった点は
異端のヒーロー、ロールシャッハだろうか。
原作でも映画の中でもパラノイアと呼ばれているロールシャッハ。
「ウォッチメン」の中で唯一彼は自分の信じる正義を貫く昔ながらのヒーローだが、
原作では
悪と善の対立でしか考えないロールシャッハの二元論は、
一種の現実逃避だとも言っている。
そういう二元論では問題が解決しないことは、今の世の中誰もが薄々分かっている。
映画にはこの「現実逃避」というセリフは無い。
ザック監督はロールシャッハ的な人物が好きなんだなあと思う。
「300」の主役は狂気と紙一重の正義を貫き、
「カフールの伝説」にも正義を貫く老英雄が出てきて、
「エンジェル ウォーズ」では妄想の中でも自分の正義を貫くんである。
パラノイア的正義を愛するザック監督が、私はちょっぴり怖い。
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映像化してより際立ったのは
サリー・ジュピター(初代シルクスペクター)であろうか。
最早、正義なんてよく分からない殺伐とした世の中で、
サリーの不条理な愛がひときわ光る。
サリーがブレイクの写真を指でなぞる所が良かった。
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(追記)
久々に観かえしたら、やっぱりもの凄くよかった!!
コメディアン、ロールシャッハ、Dr.マンハッタン、ナイトオウル…
それぞれの壮絶な負け戦を、ザック監督は全力を傾けてカッコ良く描く。
青いスッポンポンことDr.マンハッタンの哀愁…。
ひとりCIAことコメディアンの純情…。
カッコ良く描くことが、ザック監督のこの作品への愛なんだなあと思った。
コメディアン
コメディアンの死から始まる物語。それは人間性の死を意味しているみたいに感じられる。
何が善で何が悪かという質問が視聴者に突き付けられているようだった。
それは、多数を救うために少数を犠牲にするのかという質問にもつながり、YESと答えた二人を私は怖いと感じた。
コメディアンもロールシャッハも善と悪が共存すること、その矛盾に悩むことが人間らしさだと表現していたのに、結局いなくなってしまった。
いろんな風に解釈できる、知的な映画。感じたことはいっぱいあるのに、言葉が足りないなー。
ダークナイトといい、ヒーローものは現代社会の抱える問題を投影してて、興味深い!!!
ニクソン役のつけ鼻が大きすぎてちょっとびっくりした。
DVD特典に期待大!
■観る前に読む――原作『WATCHMEN』に心酔
映画を観る前に原作コミックを読みました。
といって旧来の原作ファンではなく、映画本作の予告編を観て興味を持ち、ネットで調べているうちに翻訳コミックの改訂版リリースを知って即購入、原作の壮大なスケールと着想にやられてしまったクチです。
テリー・ギリアムやクエンティン・タランティーノなど名だたる監督が企画に乗り出したものの断念、最初の企画スタートから今回の映画公開まで紆余曲折23 年の歳月がかかってしまった背景には、あのストーリーを一本の映画としてまとめきれるのかどうか、更には原作者のアラン・ムーアをして「コミックでしか表現できない作品をつくったから、映画化は絶対に無理」といわしめた世界観とコミック表現をどのように映像化するのか、といった壁が立ち塞がっていたとのこと。
後者については、今回、ザック・スナイダー監督の映像センスで見事にクリアされていました。
原作のイラストレーションを手がけたギボンズのコミックに倣って、コマ割の構図やキャラクター造形がほぼ忠実に再現され、ニクソン大統領統治下という架空の1985年、荒んだアメリカ都市部の舞台がしっかりと再現されていました。
問題は前者。
ネタバレになるので詳しくは説明できない“世界平和に導くための手段”や海賊物コミックのくだりを映像でどう表現するのだろうと期待を寄せていたのですが、あの“手段”は映画オリジナルに変えられ、原作のストーリテリングの軸になっていたニューススタンドの店主とコミックを読みふける少年とのシークエンスが割愛…。
■個人的には変更点に納得も、「コミックならではの表現」を痛感
原作と比べてあっさりと処理されてしまった感のある“世界平和に導くための手段”ですが、私個人としては納得。映画の尺を考えてのことでしょうが(それでも2時間43分)、海賊コミックにまつわるシークエンスをばっさりカットしたことで、原作の“手段”をそのまま使用する訳にはいかない。
その分、原作よりもクレバーかつスマートな着想による“手段”が用意されています(あくまで個人的な見解です)。
原作未読の奥様と鑑賞したのですが、いわく「展開が早すぎるし回想シーンばっかりで意味が分からない。説明不足だし未回収の伏線が多いように思う」と散々なコメント。時期的に『ダークナイト』や『アイアンマン』と比較されてしまうこともあってか、ネット上のレビューを見てまわっても一般の映画ファンにもあまりウケは良くない様子。
こちらは原作に惚れ込んでしまっているため、ほぼ原作通りのストーリー描写に違和感はなかったのですが、何かモノ足りなさというか消化不良感があったことは否めません。
原作では初代ナイトオウルが引退後に発表した自伝で語られる「ミニッツメン」だとか、ベトナム戦時下のニクソン体制や、ヒーローたちを追いやった「キーン条例」について等々、知れば知るほどに味わいが深くなる作品なだけに、むしろ映画ではなくTVドラマとしてシリーズ化した方が成功したのでは、とも。
つくづく原作の構成が素晴らしいことに気づかされました。
更には、彼らウォッチメンらヒーローの姿(映画の衣装・美術は秀逸)や台詞回しが映像化されたことで陳腐に映ったことに、コミックと映像ではこうも印象が違うのかと愕然。
ナイトオウルとシルクスペクターがオウルシップ内で性交渉するシーンは原作ではあっさりながら情緒的に描かれた名シーンでしたが、映画の中で80年代ソングをBGMにこのシーンが展開された時には、このまま原作通りのストーリーだったら「これはラジー賞ノミネートかも…」と余計な危惧を抱いたほど。
ここ数年日本でもマーベルヒーローズを中心にアメリカンコミックものがヒットしていますが、アメリカンコミックというサブカルチャーとベトナム戦時下という歴史的背景の薄い日本において、『ウォッチメン』のアンチヒーロー哲学はごく限られた層にしか響かないと痛感しました。
そもそも日本に置き換えたとして、「ウルトラマンと戦隊ヒーローが、太平洋戦争の戦時真っ只中で軍部と衝突しながら暗躍する物語」がどれだけウケるのか。
マニア度の高い作品と言わざるを得ません。
■DVD特典に期待大!
英語版の本家プロモーションサイトにはいくつかのサテライトサイトが存在します。
thenewfrontiersman.netはそのひとつ。
アクセスしてもらうと分かるのですが、ミニッツメンや初期ウォッチメン活躍時からキーン条例施行前後の、TV討論やニュース映像、国家機密文書や原作ではお馴染み「ニューフロンティアズマン」の表紙、VEIDT社の広告などが散りばめられています。
(映像作品はYoutubeに投稿されています)
映画館で購入した本作パンフレットにもDVD特典に関する以下の記述があります。
“グラフィックノベルにあった「黒の船」にまつわるエピソードは、屋外セットに建てられたキオスクを中心に展開される。映画本編には反映されなかったが、今後リリースされるDVDの特典用映像として撮影済である。”
どう考えても原作ファンしか喜びようのない特典ですが、上記の情報からもかなりのボリュームが期待できそうです。
このレビューをエントリーした時点でDVDリリースの日時はまだ発表されていませんが、原作ファンはDVDを購入して再度鑑賞する日を心待ちにしなければ。
※DVDの発売が2009年9月11日に決定しましたね
(日付が狙い過ぎ…)
ヒーローとその孤独
たとえ能力が人のそれを逸脱したものであっても、ヒーローは人であり、人でありたかった。
だけど能力がひとのそれを逸脱したものであるが故、人はヒーローが人であることを許さなかった。
人であることを諦めたヒーローは、人を守ることにも、地球を守ることにも意味を見出さない。
なんらかの犠牲を以ってして、地球を守るのか、犠牲を出さずにしばしの平穏を生み出すのか。
ヒーロー達はそれぞれが孤独で、それぞれが弱い人間なのだ。
とても悲しい物語でした。
炎
確かにアメコミ映画の傑作だ。全体を通してのバランスは悪いとは言えないが、テーマ性や脚本の巧緻さ、単純な面白さは『スパイダーマン2』や『ダークナイト』といった傑作アメコミ群に匹敵する。編集の凄さを味わうためにはもう一度見る必要がある。
劇場で一人だけ爆笑したシーン。それはナイトオウルとシルクスペクターのセックスシーン。正常位なのに腰を思いっきり動かしてるのは下の彼女で、最後にはもの凄い火を噴く・・・・唐突な凄えギャグ。
あと、ロールシャッハ(ク)は素顔の方が格好良かった。「俺の刑務所だ~」って言うところ、檻の中から悪党を脅すところ、強すぎの格好良すぎ。
全24件中、1~20件目を表示