劇場公開日 2009年8月1日

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「とにかく落武者+ゾンビの下手な展開。それがクスクスと楽しめる人ならアタリでしょう。豪華な出演陣がゾンビや自虐的な役柄に体当たりしているところが凄いです。」山形スクリーム 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

2.5とにかく落武者+ゾンビの下手な展開。それがクスクスと楽しめる人ならアタリでしょう。豪華な出演陣がゾンビや自虐的な役柄に体当たりしているところが凄いです。

2009年7月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 もう予告編を見ただけでも衝撃!
 落ち武者ネタなら、ゴリの方が笑えた(^^ゞ余りのベタさに、脱力感さえ感じた。こういうドタバタには、それでも生真面目に演技する成海璃子がお似合いだぁ。
 ・・・なんて以前日記に書いて、絶対に見ないことにしようと決意していたのにですぅ。そういう作品に限って試写会が当たってしまうんですね(^^ゞ落ち武者の祟りでしょうか?でも、当たったからには、見ないわけには行かぬとばかり、行ってきましたよ。

 とにかく予想通りのベタでシュールな展開。小地蔵にとって、苦手なジャンルの作品だけに、見終わるまでが辛かったです。
 当然突っ込みどころも満載。落ち武者の一部は、なんで海から蘇るのでしょうか。壇ノ浦だったらわかる気もするけど。そしてなんで落ち武者が、車というものを認識して、持ち主を脅して、車に乗り込み、ドライブを楽しみながら、御釈ケ部村に集合できるの?

 加えて、なぜか落ち武者たちは、「老人と子供のポルカ」をある老婆が歌うと風船のように破裂して消えてしまうのだけれど、その対策がわかっても、必要以上に逃げ回るのは、脚本上の時間稼ぎをしているとしか見えませんでした。わかっているんなら、何でその歌を歌わないのと疑問が残ったのです。

 昔同じアパート長屋で暮らしたこともある竹中監督作品をこき下ろしたくないけれど、生理的な問題なので、監督お許しくださいませ。
 よく言うと、シャイな竹中監督が、凄くお茶目に登場人物を描いている作品ともいえます。監督自身の幅広い交友ネットワークで集めた豪華キャストに、普通恐れ多くてこんな演技指導は無理だろうというキャラを、ふつうに演じさせているところが凄いです。
 その分、登場人物のキャラはどのキャストも濃厚!登場するだけでクスクス笑ってしまうことでしょう。それが楽しめる人なら、本作はアタリですよ。

 中でもゾンビ役がスゴイです!落武者の体液を吹き付けられると死体でもゾンビになってしまうのですが、この特大オーバーアクションの下手なゾンビに、豪華な共演陣が大まじめに取り組んでいるところが傑作です。
 ゾンビになっても「なんでオトコができないのよ~」と、男を求め続ける勝先生という役柄は、演じるマイコに対して、本人への痛烈な皮肉なのかも?

 さらに、本人役の温水洋一なんか、もっと惨めでした。なんと劇中で、登場人物たちから、すぐに芸名を忘れられるというどうでもいい役者扱いだったのです。本人役なのに。 それに対して、何度も温水洋一ですと芸名を連呼するという、あり得ない惨めさでした。ここまで監督もよくやらせるものですね。

 徹底した下手さで進行する本作の中で、唯一シリアスなのが、落武者の頭領葛貫忠経の登場シーン。沢村一樹の凛々しい武士ふりも決まっていて、光笛姫と逃げ延びる時代劇パートも、ずしりとした重みを感じさせました。
 ひょっとして竹中監督は、まじめに時代劇を撮らせば、いい作品を生み出すかもしれません。葛貫の登場シーンでは、監督の演出技量の確かさを感じさせてくれました。

流山の小地蔵