劇場公開日 2009年3月20日

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「 コミカルだけど、ドタバタでなく、人生について深く考えさせられる秀作。まさにジム・キャリーがぴたりとはまる、彼のための作品といっていいでしょう。」イエスマン “YES”は人生のパスワード 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 コミカルだけど、ドタバタでなく、人生について深く考えさせられる秀作。まさにジム・キャリーがぴたりとはまる、彼のための作品といっていいでしょう。

2009年3月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 コミカルだけど、ドタバタでなく、人生について深く考えさせられる秀作。まさにジム・キャリーがぴたりとはまる、彼のための作品といっていいでしょう。

 もし人生すべてに「イエス」と答えたら、どんな奇跡が待ち構えているでしょうか。一見ドタバタな喜劇を見せられそうなテーマですが、実はこれ実話だったんです。BBCのラジオディレクターが7ヶ月挑戦して、劇中にあるような幸運を掴んだというから、事実は映画よりも奇なりですねぇ。

 それにしても、奥さんに逃げられたからカールの毎日は単純なワンパターンの繰り返し。人付き合いまで面倒がる怠惰さは、徹底していました。勤務先の銀行でも、客からのローンの申請には、関わるのが面倒だから尽くNO!アフター5は、決まってレルタルショップに通って、夜はDVD鑑賞三昧。
 口実を作っては、飲もうという親友からの誘いを断っているのだけど、断り方が思いつきで嘘八百並べたもの。冒頭のシーンでは、DVDを借りようとしているところを見られていてバレバレなのに、仕事で忙しいと強弁するところが何とも可笑しかったです。

 でも笑ってばかりはいられません。演じているジム・キャリー自身が「カールはまさに僕そのもの」といっているくらい生きることを避けているマンネリな人って、身の回りに結構いるでしょう。ご自身を含めて(^^ゞ

 そんなカールでもこれじゃダメだぁと落ち込むこともあるようでした。そこで、一念発起して参加したセミナーっていうのも凄かったです。なんとあのカールが一発でイエスマンに大変身したのですから。

 しかし意地悪な監督は、ここからカールに様々な試練を与えています。ホームレスに送ってくれと頼まれたらイエス、さらに有り金全部くれと言われてもイエス。オケラになったあげく、車はガス欠のピンチ!
 このピンチが、アリソンという素敵な彼女との出会いをもたらしてくれるのだから、世の中何がどう転ぶのか分かりません。
 但し隣の老婆はやばかった!
 独身のカールを慰めてあげると、入歯を外して、カールのズボンを引きずり下ろしたのです。
 私じゃ嫌?と聞かれて、さすがのカールも一度はNOといってしまいます。がぁぁぁ、「NOマン」の祟りとしか言いようがないアクシデントの連続に遭遇して、老婆の元にUターン。思わずイエスといって、その身を老婆に預けてしまうのですね。イエスマンも大変だぁ!

 この映画で描かれているカールはごく普通の男で、とても行き当たりばったりなところがまたいいんです。カールのような男がそんな状況にハマっていくこと自体、愉快だし、ジム・キャリーが演じるからこそ、その面白さを際限なく表現できていると思いました。
 監督の意地悪は進化していきます。
 イエスマンの御利益で、カールはアリソンのハートを掴んだものの、彼女に自分がイエスマンだと知られてしまうのです。賢いアリソンは、カールにきつい一撃を食らわし、音信不通とさせてしまうのですよ。
 その理由とは、アリソンへの愛がイエスとただ義務的にいっているのかと聞いたとき、カールは口ごもり明確にNOと言えなかったからなのです。なるほどねぇ~!
 以来、カールはイエスマンであり続けることに悩みます。イエスと答え続けて、仕事でも出世を掴み、恋も手にすることが出来たけど、このままでは、アリソンとは離ればなれになってしまう。一体どうすればいいのかぁと。

 そしてラスト、カールはイエスマンであることの本当の意味を見つけます。彼がどんな『悟り』を開いたか。そしてアリソンとはどうなったか。ギャグ映画として見ているつもりが、思わず感動してしまうラストシーンをこうご期待ください!
 ※エンドロール後にも映像がありますので、最後まで鑑賞を。

流山の小地蔵