劇場公開日 2009年2月7日

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悲夢 : インタビュー

2009年2月3日更新

サマリア」でベルリン映画祭銀熊賞を受賞、「うつせみ」でべネチア映画祭銀獅子賞を受賞した韓国の鬼才キム・ギドク監督が、オダギリジョーを主演に迎えた最新作「悲夢(ヒム)」。本作について、オダギリとキム監督がミニ記者会見でインタビューに応じてくれた。(取材・文:平井万里子)

オダギリジョー&キム・ギドク監督 インタビュー
「ここまで監督と仲良くなれるものなんだと驚いてます」

かねてから憧れだったキム・ギドク監督との仕事が実現
かねてから憧れだったキム・ギドク監督との仕事が実現

悲夢」は、オダギリと「私たちの幸せな時間」のイ・ナヨンが主演の異色ラブストーリー。別れた恋人を忘れられないジン(オダギリ)と別れた恋人を憎むラン(イ・ナヨン)は、夢を共有しあうという不思議な関係で結ばれていた。精神科医は「2人が愛し合えば夢は消える」とアドバイスするが……。

監督・役者として相思相愛な オダギリとギドク監督
監督・役者として相思相愛な オダギリとギドク監督

キム・ギドクのファンを公言するオダギリにとって、念願の初タッグとなった本作。「現場では、撮影期間わずか12日間というスピード感と判断力、柔軟性にも圧倒されました」とますます監督に惚れ込んだ様子。

一方、「ブレス」のチャン・チェンに引き続き、2度目の海外俳優起用となったギドク監督は、「映画は地域を限定して語られることが多いですが、国にとらわれず、人間という根本的な存在の意識を表現していきたい」という考えのもと、彼はオダギリを主人公ジン役にキャスティング。独特の雰囲気と演技力には以前から注目していたそうだが、最大の決め手については「彼が『東京タワー/オカンとボクと、時々、オトン』のプロモーションで来韓した際、長髪だったのを見て」とのこと。その理由には、画家出身である監督独特の美意識が反映されていた。

「夢にしろ職業にしろ“時間の蓄積”を感じさせるものが欲しかったので、ジンも長髪でなければいけなかった。また、長い時間を色で表すなら白と黒。その2色を主演2人の衣装に配しました」

“夢”がテーマとあって観客の解釈にゆだねる部分も多いが、演じていて難しくはなかったのだろうか。

「第1稿では役名が“ジョー”だったので(笑)、自分の物語として読めたんです。ノートパソコンで物語の流れを自分なりに整理して、監督がどう考えているかすり合わせていきました」(オダギリ)

異なる言語の会話が最初は違和感を覚えるが…
異なる言語の会話が最初は違和感を覚えるが…

「現場にパソコンを持ち込んだ俳優は初めて(笑)。彼は脚本も完璧に把握していたし、監督が2人いるのかと思うほど熱心でしたよ」(監督)

映画の中でとりわけ不思議に映るのは、ジンとランがそれぞれ日本語と韓国語で会話するシーン。最初は対話に違和感を感じるものの、2人の“間”が絶妙で、次第にそれも薄れていく。監督はこう語る。

「夢というのは時間と空間を超えることができ、通訳が要らないもの。何より2人が脚本の読み合わせをした段階で『いける』と思ったんです」

これにはオダギリがかつて通っていた俳優養成所での経験が裏打ちされている。相手の感情に合わせて同じことばを繰り返すという授業があったという。

言葉が通じないからこそ通じるものも
言葉が通じないからこそ通じるものも

「言葉を重要視しないというと大げさですが、その奥にある“気持ち”を集中的に見る授業でした。ことばが分かろうと分かるまいと、相手の感情や感覚、中身を見ようとするのが、芝居の根本にあるので、まったく問題なかったですね」(オダギリ)

こんな彼だからこそ、異国の監督と親友のような関係を築けたのもうなずける。オダギリはこう続けた。

「言葉が分からない者同士の方が、お互いを思いやれると思う。監督とも尊敬し合えて気遣える、その関係性が心地いいんです。ここまで監督と仲良くなれるものなんだと驚いてますよ。なぜギドク監督だけは特別なのかって? (フィーリングが)合うものは仕方ないですよね(笑)」

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