劇場公開日 2008年8月16日

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TOKYO! : インタビュー

2008年8月13日更新

殺人の追憶」(03)「グエムル/漢江の怪物」(06)を生み出した韓国の鬼才ポン・ジュノ監督が、10年間引きこもり続けている男を主人公に描く「TOKYO!/シェイキング東京」。7月の記者会見で来日したポン監督が、今回タッグ組んだ香川照之&蒼井優とともにインタビューに応じてくれた。(取材・文:編集部)

ポン・ジュノ監督、香川照之、蒼井優 インタビュー
「初めて渋谷を訪れたときは奇妙な興奮を覚えた」(ポン・ジュノ)
「ポン監督は役者の動かし方を知っているなと思った」(香川照之)
「自分もよく通る場所が映画に登場するのは奇妙で心地良い」(蒼井優)

日本人が抱える心の闇を韓国人監督が映し出す
日本人が抱える心の闇を韓国人監督が映し出す

――香川さんと蒼井さんは、ポン・ジュノ監督の撮影によって東京に対する見方が変わったことはありますか?

香川:「見慣れた場所を無人にして走ったりするのは、日本人監督にはない発想ですよね。ラストシーンは横浜にある五叉路で撮影したんですが、日本の監督だったら一番最初に諦めているような場所だったのに、監督はあの場所にこだわっていました。(撮影で車を足止めされた)おばさんのドライバーから『製作の人来なさいよー!!』と怒鳴られてスタッフが連れて行かれたりして、修羅場のような現場でしたよ(笑)。それでも監督はあの場所にこだわってロングショットを撮影したんですが、それも含めてやはり海外の監督が撮ってるんだと思った瞬間がいっぱいありました」

蒼井:「確かに、ここで撮影するとは思わなかった場所で撮ってましたね。それはレオス・カラックス監督(の「TOKYO!/メルド」)にも共通していますが、見慣れた風景を切り取ることによってまったく違う風景になっているんです。自分もよく通る場所が映画に登場することで、そこにズレが生じ、その感覚は奇妙でありながらも心地良かったりして、やはり日本人が撮った作品とは違うと感じました」

(左から)蒼井優、香川照之、ポン・ジュノ監督
(左から)蒼井優、香川照之、ポン・ジュノ監督

――初めて東京を訪れたときの印象と、この作品を撮り終えてからの東京の印象に違いはありますか?

ポン:「初めて東京に来たのは2000年の10月、東京国際映画祭のときでした。泊まったのがエクセルホテル東急だったのですが、渋谷のど真ん中で大勢の人を目の当たりにしたときは、奇妙な興奮を覚えました。その後何度も東京に来ることになるのですが、その度に感じるのは、本当にいつも人が溢れかえっていること。あとは、電車の中も街の中も大勢の人がいるのに、お互いに触れ合わないようにしているのがとても不思議ですよね。劇中で香川さん演じる主人公も『人と触れ合うのが嫌だった』と言っていますが、自分で演出しながらも違和感を感じながら撮っていました。主人公が引きこもりになる前に通勤で歩道橋を歩いているシーンは、このホテル(セルリアンタワー)のすぐ横の歩道橋で撮ったんですよ」

――セリフが少ない中、表情で見せる演技が要求されたのでなないかと思いますが、その難しさなど教えてください。

香川:「表情の芝居は確かに難しいです。それにあの映画には固有名詞が一切出てこないんです。登場人物は男、女、ピザ屋の社長、引きこもり1、2、3。でもポン・ジュノ監督の脚本には、僕の名前をそのまま使って『香川が10年引きこもっている』と書かれていたんです。それを読んでいくうちに、自分自身が本当にその役になっているんですよね。そのことを監督に伝えたら、『殺人の追憶』の犯人役で登場するパク・ヘイルにも固有名詞がなく、同じ書き方をしたことがあるとおっしゃっていて、ポン監督は役者の動かし方を知っているなと思いました。だから僕は最初から役作りする必要がなく、『オレは引きこもりなんだ』という風に入っていけました。監督がどこまで意図しているのかは分からないですけど」

ポン:「自分ではなぜそうしたのか覚えていないんですよね」

ポン監督の演技力は太鼓判?
ポン監督の演技力は太鼓判?

香川:「でも確実にそれが功を奏してますよ。台本にある自分を名前で読むなんて絶対にないはずだから」

蒼井:「私はどんなお芝居もいつも難しいと思ってますが、今回はスタートがかかる前に香川さんの目を見てから演技していました。香川さんの目を見てパワーをもらい、自分の感情の器をギリギリのところまで上げてもらって、監督のスタートの声でそれを溢れ出させるように演じていたのを覚えています。それと、よく監督自ら演じて見せてくれたんですよね」

ポン:「そういうときは絶対メイキングに撮らせないようにしていました(笑)」

香川:「僕のときも監督が演じてくれたんですが、目の演技など一体どうやってるんだろう思うぐらい上手いんですよ! そういう意味では、僕は結局1カットも監督を超えられなかったんじゃないかな」

ポン:「(日本語で)ウソだ!(笑)」

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