劇場公開日 2008年4月5日

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「想像を膨らませて楽しむ」クローバーフィールド HAKAISHA MASERATIさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0想像を膨らませて楽しむ

2017年10月31日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD、映画館

公開前も「謎の映画」とされ、いざ封切りされても結局謎は謎のまま。全編POVであり、「乗り物酔い注意」の看板が特設されるなど多くの「クローバーフィールド現象」が巻き起こるセンセーショナルな作品だった。流石J.J.エイブラムスだ。さて、本編を観賞しての感想だが、臨場感が物凄く、手に汗握りっぱなしであるが、酔う。しかし面白い…こんな感じだ。本作の真の面白い所は本編ではなく「本作を取り巻く環境」だろう。それと劇中のヒントなどを組み合わせて出来上がった「憶測」がワクワクさせる。点と点が結び付く所もあれば、矛盾もあるということが更なる探求心を煽るという訳だ。
本作のキーワードは以下の通りである:
①公式サイトや関連サイトなどで分かること
・日系企業タグルアト社
油田開発などを行う企業であり、劇中の主人公が副社長として日本へ赴任する会社である。その子会社が「スラッシオ」と呼ばれる飲料水を発売し、ヒットさせている。劇中ではロブの兄、ジェイソンがそのTシャツを着ている。
タグルアト社は油田掘削施設で大規模な事故を起こしており、それが何らかの形で怪物と繋がっている。また、潜水艦による調査で、「スラッシオ」の成分となる地点を探り当てるが、その海底に怪物が劇中で背中を擦って振り落とす寄生虫(アブブと呼ばれている)と背丈や特徴の似た生物が発見されている。「スラッシオ」の成分調査や研究の過程で、そのアブブが突然変異を起こし、巨大化したとも考えられる。

②本編でのヒント
・謎の落下物
劇中のラストシーンで、ロブとベスが観覧車に乗っているシーンがあるが、画面右上から突如何かが水平線に落下する。(船が目印)恐らく怪物だが、そうすると後述の監督の発言やタグルアト社関連の話とは矛盾が生じる。
・軍の関与
劇中で「軍が関与してるかもな」という台詞がある。ヒントとしてはそれだけだが、掘り下げて調べると確かにその可能性が出てくる。(軍の実験で…とかではない)
・怪物は1体ではない説
良く観てみると、怪物の大きさや特徴などが違って見える。顔の表情も違うこともあり、様々な憶測が飛んでいる。
・怪物、主人公らの安否
最後の攻撃である、マンハッタン島まるごと吹き飛ばす作戦にて、主人公2人は恐らく亡くなった。冒頭で、合衆国国防総省がカメラを回収したことが明かされるが、激戦区だったセントラルパークの橋の瓦礫下より国防省の人間が拾い上げたということは、「もう人間が入っても大丈夫」ということを表す。よって、安全=怪物は倒されたと考えられる。もしくは国外へ追い出した、もしくは負傷した所を生け捕り(これは私の考え)にした。いずれにせよ、その場所での危機は去ったととれるため、何らかの決着はついたのだろう。

③製作陣の話で分かること
・マット・リーヴス監督より
「怪物は生まれたばかりの子供なんだ」
と発言。「彼(性別問わず)は感情があり、いなくなった母親を探している。」とのこと。あの甲高い咆哮は苦痛に耐えている声とも聞こえるが、そう言われてみるとどこか悲しい叫びにも聞こえる。

ここにサイトの情報を組み合わせて考えると、タグルアト社の油田事故の以前に
ノルウェー国籍の船が行方不明になっているのだが、その原因が登場した怪物、あるいはその親である可能性がある。その後にアメリカ海軍の軍艦の沈没事故があるのだが、これはアメリカ海軍の調査で怪物が発見され、攻撃の対象となり、そのときに母と子が離ればなれになってしまったと推測される。母は沖へ、子は陸へ(マンハッタン島)という形だ。ここで母が死亡したとも考えられるが、劇中の「手強いやつだ」という台詞から、その可能性は低いとされる。

このように、調べれば調べるほど関連が繋がってくる。マニア臭いがとてつもなく斬新な設定に脱帽だ。長文を失礼。

Mina