劇場公開日 2010年1月23日

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Dr.パルナサスの鏡 : 映画評論・批評

2010年1月5日更新

2010年1月23日よりTOHOシネマズ有楽座ほかにてロードショー

テリー・ギリアム映画の真髄は“懲りない男”にあり

本作は、いろんな意味でギリアム映画の集大成だ。まず映像はカラフル、キッチュ、ブキミでキュートな初期ギリアム流。パルナサス博士が鏡で見せる観客の願望を視覚化した世界は、悪夢なのだが、毒なのに甘い、ギリアム配合の人工甘味料に満ちている。特に連想させるのは「モンティ・パイソン」と「バロン」。懐かしの「モンティ・パイソン」的な英国の巡査集団まで登場する。

さらにギリアム流なのは、いつもと同じ主人公の設定だ。よく言えば“不屈の男”、ありていに言えば“懲りない男”。最初の「モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル」から主人公は聖杯を探し続ける男であり、「バロン」のホラを吹き続ける男爵も、「未来世紀ブラジル」の脱出を試み続ける男もそのバリエーション。本作のパルナサス博士も悪魔との賭けに勝つことを諦めない。

そして、なによりギリアム自身が“懲りない男”である。それを今回も証明して見せる。これはすでに「未来世紀ブラジル」でのスタジオとの抗争でも証明済みだが、なにしろ今回は障害がデカい。撮影完了前に主要登場人物を演じていたヒース・レジャーが急死したのだから。それを同じ役を複数の男優達が演じるという大胆なアイデアでクリアするのは、まさにギリアムならではの大技だろう。

さらにギリアムは先頃、一度は頓挫した映画、風車に挑み続ける自称騎士という“懲りない男”を描く「ドン・キホーテを殺した男」の製作再開を発表。ギリアムは、悪魔を出し抜くことにかけては、パルナサス博士よりも上手(うわて)に違いない。

(平沢薫)

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