劇場公開日 2012年4月13日

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「ベタか王道か」ジョン・カーター 12番目の猿さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ベタか王道か

2013年7月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

興奮

 正直、この作品は全く見る気がなかった。主人公の名前をまんま持ってきて『ジョン・カーター』という題名の捻りのなさ、原作が100年以上前のものだという埃っぽさ、日本公開前から赤字作品という噂も飛び交っていて、ディズニー110周年の大作とはいえやっちまった感が漂っていたからだ。しかし、アンドリュー・スタントンの名前を挙げられては話は変わってくる。『ウォーリー』で監督を務め、『カールじいさんの空飛ぶ家』で制作総指揮を、そして『トイ・ストーリー』シリーズで脚本を手がけている彼が本作の監督を務めているのである。さらにピクサー生え抜きのスタッフが脇を固めていて、「『トイ・ストーリー3』を超えるアニメは向こう十年出てこないぜ!」とか豪語(心中で)するほどのピクサー贔屓としては、この映画を到底無視することができなかった。
 全体の感想としては、以前どこかで『アバター』を「大金をかけて作ったハンバーガー」と評したことがあったが、この『ジョン・カーター』は技巧を凝らしたおせち料理といった印象だった。とにかく職人芸が光るというか、『トイ・ストーリー3』でもみせた、細部にわたる丁寧さが本作でも様々な部分で活きている。原作の大雑把な設定に対し、ジョン・カーターの悲痛な過去という人物像の肉付けや、異性人達の苦悩、惑星間移動の仕組み、陰の支配者であるサーン族の存在を新たに盛り込み、さらに演出に関してもジョン・カーターの馬鹿馬鹿しいまでにデフォルメされた粗暴さ(とりあえず敵は殴る!)や、全く無駄のないストーリー展開のテンポの良さ、所々に笑いどころやツッコミどころを盛り込んでくるなど、100年以上前の原作、ぶっちゃけもう白骨化しているような物に、スタントン達はみずみずしい迄の肉体を与え蘇らせているのである。また、古くさい昔のSFっぽさを残しつつも、よく見ると斬新なデザインを感じさせる火星人の衣装や小型飛行船など、常に目を楽しませてくれるし、とにかく振り返るとその芸の細かさ、観客を引き込もうとする積み上げられた工夫と努力には目を見張るものがある。さっすがピクサー相変わらずIQ高ぇ!と感嘆せずにはいられない作り込みっぷりだ。
 ただ苦言を呈すのなら、確かに一つ一つは素晴らしいのだが、その「良さ」に纏まりがなかった。つまり、そういった点を踏まえての「おせち料理」ということで……。

13番目の猿