劇場公開日 2008年8月9日

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「作品自体は、冗長気味。ハビエル・バルデムという俳優の凄みを感じさてくれました。」コレラの時代の愛 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5作品自体は、冗長気味。ハビエル・バルデムという俳優の凄みを感じさてくれました。

2008年7月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 作品自体は、冗長ではありましたが、ハビエル・バルデムという俳優の凄みを感じさてくれました。なにしろ53年間もひとりの女性を思いつづけ「純潔」を守り抜くという主人公フロレンティーノを演じる訳ですから、その醸し出す雰囲気にそれだけのことをやり遂げられるという説得力が必要です。
 またこの役所には、次のような飛んでる一面もあって、まさにウルトラC級の難しい役作りが求められるキャストであったのです。
 フロレンティーノは、フェルミナへの精神的な純潔を守りつつも、愛が叶えられない反動から、ほとんどビョーキのごとく片っ端に女に手を出していくのです。その数なんと622人!
 フロレンティーノ主人公の血筋は、プレイボーイ一家。父親もさんざん女を作ってフロレンティーノの母親を泣かせていたのです。血は争えません
 なかには不倫相手の女性を伴侶に殺されてしまったりという波乱を生むこともありました。また70歳超えても親戚の女子大生とエッチするくらい、モテモテで精力家であったのです。
 このように述べると、フロレンティーノのイメージは、希代の女たらしで軽薄な男のように思えてしまうかもしれません。しかし彼は詩人であったのです。仕事の契約文書ですら、恋文風に表現してしまうくらいに。そして、生き方そのものを詩にしてしまったのでしょう。彼にとって女性との出会いは、愛の狩人と言った方がいのかもしれません。

 こんなフロレンティーノを、バルデムはいやらしさを微塵もさせないポーカーフェイスで演じきってしまいました。いやはやお見事の一言です。バルデムが演じるフロレンティーノはどこまでも外見は純真、潔白な紳士。そして近づくと愛について激しく語りかけてくる情熱家。そのギャップが女たちをトリコにさせてしまったのでしょうか。
 画面で見ても、53年間フェルミナを一途に思い続ける熱いパッションを感じさせる一面をバルデムははっきりと感じさせてくれたのです。
 ベッドシーンも多く、官能的な台詞も多々あるなかで、バルデムがいなかったらただのポルノ作品になってしまったかもしれません。中でも、ラストの70歳を超えたカップルのベットシーンは、少しもいやらしさがなく、感動すら感じました。

 ただ残念なこととして、中盤が長すぎました。フロレンティーノの女遍歴を描くところではもう少し縮めてもよかったのではなかったでしょうか。それとフェルミナが結婚してしまうところでは、逆に唐突すぎて、もう少し複線を置いて、彼女の心変わりの軌跡を描いてもよかったのではないかと思います。
 また、重要な背景となるコレラの蔓延と内戦の悲惨さという面はあまり描かれておらず、恋愛ものに特化してしまった点も、もう少し描き方があったのではないでしょうか。

 原作の忠実な再現を求めて舞台となるカタルヘナでロケを行ったそうです。映像的には大変美しく、南米の異国情緒をたっぷり感じさせてくれました。

流山の小地蔵