ライディング・ザ・ブレット

劇場公開日

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解説

モダン・ホラーの帝王スティーヴン・キングが1999年に交通事故で重傷を負い、臨死体験を経て生まれた短編小説を基にしたホラー映画。監督は、「スリープウォーカーズ」やTV映画『シャイニング』などで、何度もキングの映像化作品を手がけてきたミック・ギャリス。キング・ファンにはニンマリできるようなお遊び場面もあり。

あらすじ

1969年10月30日、ハロウィン。アラン・パーカー(ジョナサン・ジャクソン)は、メイン州立大学に通う21歳の画学生。他の学生と同じくマリファナを喫い、ロックを楽しみ、ガールフレンドとつきあい、それなりの学生生活を送っていた。だが、どこか他の生徒とは異なり陰のある雰囲気を漂わせている。わずか6歳で父親を亡くしたことと、ある恐ろしい過去が契機となって、常にクールに客観視する別の自分が存在するようになり、恋人のジェシカ(エリカ・クリステンセン)の言葉さえ全て否定的にとってしまう。誕生日にも関わらず、一人でバスタブに浸かりながらマリファナを喫い、カミソリの刃を弄んでいると、かつて自ら描いた死神が現れた。死神は手首にあてて自殺するように誘惑する。そこに、ジェシカと友人たちがいきなり「誕生日おめでとう!」の声とともに部屋に入ってきた。驚いたアランは、思わず手首に刃を走らせてしまった。結局、彼は病院に収容され、手首の縫合手術を受けた。ジェシカとは決別することになったが、彼女から特別な誕生日プレゼントをもらった。ジョン・レノンのペアのコンサート・チケットだ。全てから逃れようと、アランはルームメイトと旅の準備を始めるが、そこに電話が掛かってきた。母ジーン(バーバラ・ハーシー)が脳卒中で倒れたという電話だった。その知らせを聞いた時のイメージが、6歳の頃に死んだ父親の死と重なった。アランはコンサートを諦め、母親に会いに行く決意をする。母が収容されたのは、遥か190キロ先のルイストン病院。そこまでヒッチハイクしていこうとするが、乗せてくれるのは怪しい男たちばかり。意を決して向かったこの旅は、アランを恐怖迷宮の世界へと誘っていく。カラスが喋りはじめたり、自動車事故の犠牲者が突然掴みかかってきたり、亡き父親の姿を目撃したりと、不気味な幻想に苛まれる。それは生と死の狭間の道行であり、絶え間ない幻想と恐怖が、彼の過去・現在・未来を徐々に明らかにしていく。ヒッチハイクしようと腕を上げると、その小型トラックには銃を持った田舎の荒くれ者たちが乗り込んでいた。執拗に追いかけられ、必死で逃げ回っている時、遊園地のジェットコースター“ブレット”の恐怖と苦い思い出が蘇ってきた。12歳のときに母親と一緒にせっかく長い行列に並びながら、いざ乗る番になって、急にやめてしまった苦い思い出。実は“ブレット”に乗る直前、アランの目には乗っている自分が死神に突き落とされる恐怖の光景が映ったからだ。それこそが、彼が抱き続けていた恐怖だったのだ。たまたま紛れ込んでしまった墓地で、アランは自分と同じ誕生日のジョージ・ストーブという男の墓が目に入った。2年前の今日、亡くなったとされるその墓には、「楽しむことと、死は全く別」と墓碑銘が刻まれていた。次にアランが乗ったのは、例の墓の男ジョージ・ストーブ(デヴィッド・アークエット)の車だった。彼は何年も前に起きた事故で、頭がちぎれて死んだ。そして今は、死神の伝令者として生者の魂を集めている。ジョージは、アランとその人生について異常なまでに多くのことを知っていた。彼はアランに、父親が自動車事故で死んだのではなく、自殺だったことを教える。そして、アランに地獄の選択を迫る。アランか、母親か、どちらかが、恐怖の象徴である“ブレット”に乗ることになる。それは即ち死を意味し、その選択を拒めば、二人共命が奪われてしまう。次の町に着くまでに、アランは決断しなければならない。自分と母親。どちらを選択するのかを……。

2004年製作/99分/アメリカ
原題:Riding the Bullet
配給:日活

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映画レビュー

3.5人生は弾丸のように過ぎ行く

2013年9月7日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

悲しい

怖い

久々に、勝手にスティーヴン・キング特集その14!
今回はB級ホラーテイストの強いロードムービー
『ライディング・ザ・ブレット』を紹介。
監督はテレビ版『シャイニング』をはじめ、
キング原作映画化を数多く手掛けたミック・ギャリス。

舞台は1969年。
大学のキャンパスライフを楽しむ主人公アランの
元に、母親が急病で倒れたとの報せが入る。
金のない彼はヒッチハイクで故郷の病院を目指すが、
そんな彼の行く手を次々と奇妙な出来事が妨げる。
ハッパでハッピーなヒッピー、情緒不安定なじいさん、
銃をブッ放すイカれた連中、とっくに死んだはずの父親、
そして最後に現れる死神もどきの存在は、
アランにとある究極の選択を迫ってくる。
果たして彼は母親の元へと辿り着けるのか。

主人公は「人が死ぬのなんて当然だ、命なんて
そう重くもない」と考えているような人間。
ニュースや物語で“死”を見聞きしただけで
“死”を理解したつもりになっていて、
“死”を恐れない醒めた姿勢を自分のスタイル
(言い換えればクールな所)と考えている節がある。
そんな彼が、この一夜を通して様々な“死”に直面する。

こう書くと深刻で恐ろしい物語のようだけど、
(まあ僕が書くと何でも深刻な内容っぽくなる気がするけど)
実際は“怖い”というより奇怪だったりブラック
なユーモアを感じさせたりでいかにもキング的。
『B級やねえ』と軽めに笑いながら鑑賞できる内容だ。
次々現れるクセの強い人物たちは面白いし、『タイム・
オブ・ザ・シーズン』『インセンス&ペパーミント』等の
ザッツ・'60sなステキなナンバーもガンガン流れて楽しい。

だが、主人公が行った選択が意外な方向に
転がる終盤で、物語の印象が一気に変わる。
人によってはひっそりとしたオチを拍子抜けに感じる
だろうし、最後の最後に若干『スタンド・バイ・ミー』
風味になるのを観て「あっちを意識してます?」
と穿(うが)った見方もしてしまうかもだが、
それでも僕はこの終盤に泣いてしまった。

奇妙でオフビートだった物語が、
一気に現実との距離を詰めてくる。
過ぎ去った日々への後悔。
手にしていたはずのものが、
いつの間にか離れていく寂しさ。
大切なものは次々に僕らの人生からふるい落とされていく。
だけど情けない事に――
それらがどれほど自分にとって大切なものかに気付くのは、
大抵の場合、それらがふるい落とされてしまった後の事だ。

タイトル『ライディング・ザ・ブレット(弾丸に乗る)』は
幼かった頃の主人公が怖くて乗れなかった、遊園地の
ジェットコースター、“ブレット”に由来している。
幼い頃の恐怖、そして優しい母親を怒らせた苦い記憶。
ノスタルジーというやつはいつも後悔の念と共に訪れる。
人生は無慈悲なほどの速度で直進する一発の弾丸だ。
良い事も悪い事も関係なく、次々後ろに残して過ぎ去ってしまう。
僕らは必死に、その弾丸にしがみついて生きなければいけない。

主人公の苦い記憶の描き方が淡白であるなど諸々不満はあるし、
全体的にはまったりテンポのB級ホラーな印象が強いけれど、
清々しい余韻が残る、予想外の佳作。
気が向いたら御鑑賞あれ。

<了> ※2013.09初投稿

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浮遊きびなご
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