劇場公開日 2001年10月20日

「シュールを描くにはリアルな描写の土台が重要。」ファニーゲーム レプリカントさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5シュールを描くにはリアルな描写の土台が重要。

2021年3月9日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

単純

本作鑑賞時、やたらとカルトムービーにハマっていて、とにかく普通の映画ではない奇抜な映画を貪るように鑑賞していた。ルイス・ブニュエルやパゾリーニ、果てはホドロフスキーやズラウスキーなどなど。
本作もその勢いで当時鑑賞したが、正直期待はずれであった。主人公たちが理不尽な状況下に置かれる作品だとは前情報でわかってたものの、正直現実の方がもっと理不尽な事が起こり得るし、確かにこの時代で監督の想像しうる限りの理不尽さを描いたつもりだろうが、シュールリアリズムの名手、筒井康隆の小説を十代の頃から愛読していた私にとっては、その理不尽さは物足りなく、何よりも起こってる事の異常さを際立たせるための日常的描写が物足りないので、描かれている異常さの宙に浮いたような嘘臭さが目立ってしまい、作品に没頭出来ないのだ。
筒井氏は言う。シュールな作品を作る上で重要なのは地に足がついたリアルな現実的描写が不可欠だと。だからこそ、その土台の上で繰り広げられる超現実的な事象が際立つのだと。
本作は土台がいまいちしっかりしてないため、一見奇抜なアイディアも観るものの心に迫ってこないのである。
いわゆる胸糞映画と有名な本作だが、私自身、胸糞を感じるほどのリアリティもなく終始作り話的で特に何ら印象に残らない薄い内容の映画であった。せめて被害者家族に感情移入出来るエピソードを散りばめた上で事が起これば胸糞悪くはなれたであろう。本作はそんな間もなく事が起こるので被害者に対してもニュースで赤の他人が死んだと聞かされるレベルのものでしかない。
この監督には筒井氏の傑作、「乗り越し駅の刑罰」を読むことをぜひともお薦めしたい。

レプリカント