劇場公開日 1999年6月12日

「父と息子の。そして息子と妻の物語。」メッセージ・イン・ア・ボトル きりんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0父と息子の。そして息子と妻の物語。

2020年11月8日
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鑑賞方法:DVD/BD

これ、
ギャレット(ケヴィン・コスナー)とテレーサの悲恋物語ではあるんだけど、
映画全体の比重からみて父ドッジ(ポール・ニューマン)と息子ギャレットの関係が、男の僕から見て えもいわれぬ重みをもって迫ってきた。
6:4で、これは男の物語だろう。

3つ触れたい。
【1】父と息子
この映画を観て、「自分と父親のこと」、あるいは「自分と我が息子の関係」を思わない男性はいないだろう。
不器用ながら、男親はこんなにも息子を気にかけて愛しているものなのだ。
ぶっきらぼうな言葉のひとつひとつが、こんなにも今の僕には沁みて聞こえた。

小学生の時「パパには関係ないよ」と何気に言ったら烈火のように怒って「関係ないということがあるか!」と。あんなに怒った父の姿は以後ない。
これ、まんま老ポール・ニューマンがひねた息子に殴りかかってどやしつけた台詞だ。
大人気ない、格好悪い、と思っていたけれど、自分も年を取り、今ならわかる。

「お前の目は死んだ魚の目だ」と言われて激しく傷ついたのは二十歳の頃。
ドッジ:「魚よりものを言わんせがれだ」。
口調がうちの父とそっくりでびっくり。眼差しも。
今夜おやじに電話してみよう。

【2】女性を愛するときは、全存在をかけて愛すべし。
もっと愛されることを女性は求めている。それがよく分かった。男は分かっていないということが分かった。
ちょっと遅かったけれど、僕。

【3】メッセージ イン ボトル
僕も、実は瓶を拾ったこと有るんですよ。新聞にも写真入りで載りました。
横文字でタイプ打ちの便箋は、蝋(ろう)でコーティングされてガラス瓶に入っていました。

内容?
それが、ご期待に沿えずぜんぜんロマンチックじゃなかったんですよ(笑)
「この手紙は、日本海を作戦航行中の米艦船から投下された物である。」
「任務上、投下地点を明らかにすることは出来ない」
「500ドルを拾った方に進呈するゆえ連絡されたし」
「ただし、拾ったのがコミュニストであるなら手紙は要らない」
と。

連絡先を秘匿するんじゃどうにもならないという、呆れたおふざけの手紙でした。

本作では、ボトルの中身は死んだ妻への愛と謝罪の手紙でしたよね・・
東北には「風の電話」というガラス張りの電話ボックスがあるとのこと。津波で亡くなったかけがえのない人への、伝えたい声の便りですね。

そういえば、僕も恐山に行ったっけなぁ。

・・・・・・・・・・・・

アメリカ東部、ニューイングランドのこのケープ・コッドには少し行ったことがあります。
緯度が高いから真夏でも斜めがちの日の光が差す、遠浅の海岸線でした。
ターナーの絵のように風と船が美しい港町。
海岸でムール貝をバケツいっぱい穫って白ワインと頂きました。

映画を観終わって、心に思い出の潮騒が鳴っています。

きりん
LaLaさんのコメント
2023年10月24日

きりんさん
初めまして
私の拙いレビューに共感&コメントを
ありがとうございました。(^^)/
随分前の作品ですが
見逃していたので
テレビで鑑賞できて嬉しかったです。
ギャレット(ケビン・コスナー)の
海でのラストが、衝撃過ぎましたが
ラスト、父親のポール・ニューマンの表情や
テレーサへの愛が 綴られたメッセージに
泣いてしまいました。

>キャサリンが描いた設定になっている
青い提灯を持つ女性の絵girl with lantern と
帆船の絵the young amphibian 。
あれはアメリカの画家ヘレン・マリア・ターナー

きりんさん、とても詳しい情報を
ありがとうございます(^^)/
どちらの絵も素晴らしかったですね。
絵画が好きなので感謝です。

LaLa
きりんさんのコメント
2020年11月9日

キャサリンが描いた設定になっている青い提灯を持つ女性の絵girl with lantern と帆船の絵the young amphibian 。あれはアメリカの画家ヘレン・マリア・ターナー(米)の手によるもの。

ロマン派のターナー(男性)とは別人ですが、作風とその名前、そして帆船と海のの絵で特に知られる英国の画家ターナーからヘレン・マリア・ターナーに白羽の矢が当たったものと思います。
いい絵です。

きりん