劇場公開日 2018年7月21日

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「タネも仕掛けも有るマジック、さらに魔術は大好きも、偽媚薬となると少々抵抗感も有るのだが」魔術師 Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0タネも仕掛けも有るマジック、さらに魔術は大好きも、偽媚薬となると少々抵抗感も有るのだが

2021年3月29日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

主題となるメッセージはとても分かりやすい気がした。

魔術師は言わば、映画監督で、魔術師の妻である男装助手は、監督の妻兼主演女優のイメージか。ヒトを浮遊させるマジックはロープで引っ張ってる仕掛けをアッサリとバラされてしまう。しかし、魔術師を笑った警官、その妻は催眠術の成果か、夫への長年積み重なった不満を一気に吐き出す。魔術師を嫌ってた御者は、手鎖の魔法が解けたせいか魔術士に襲いかかり、そして命を落とす。魔術を信じない科学者も、入れ違った死体により死の恐怖に陥った。魔術士に発情した夫人は、メイキャップを落としたら無下に冷たくあたり、偽物だったはずの媚薬は、座員と女中のカップルを誕生させた。偽物は倫理的には駄目だろうけれど、信ずるものは救われてしまう?。

結局、人間は魔術や媚薬の様なものを必要とする。倫理と科学だけで生きられないだろう。現に、国王さえも魔術を評価したじゃないかと。作りものや偽物の人間達に与えるパワーを見せ付ける喜劇的な映画。

その喜劇の裏側、映画の中で死んで死体となってしまう飲んだくれ俳優は哀しい。神様はこの男を見捨ててしまったのか。そして、話せない魔術師の仮面を剥ぎ取った男は、みすぼらしくお金を周りにせびるも冷たくあしらわれる。それは監督自身の自画像か。媚薬で稼いだお金、不良少女モニカ等のヒット作品のイメージ?、で魔術団からリタイアする老婆は、ベルイマンを見捨てたプロジューサーか何かか?。ただの喜劇の様で、そうでは無いベルイマンならではの映画ではあった。

Kazu Ann