劇場公開日 2020年8月2日

「君はこの映画がわかるか?」8 1/2 KIDO LOHKENさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0君はこの映画がわかるか?

2020年7月11日
PCから投稿

冒頭の部分.主人公が車に乗っているといきなりタバコの煙のようなものが湧いてきて苦しみ始める。そしてそれを周りの大人たちがじっと見ている。すると突然車から解放され、ふわっと気持ちよく空に舞い上がっていく。これで自由になれたと思ったら・・・ここで言うタバコの煙とは大人の社会の象徴であり、この映画の中で煙草を指に挟んでるやつから逃れたいという暗示である。まずこの部分をぼーっと見てしまうとこの映画はさっぱりわからなくなるだろう。私も初めて見た時、何がなんだか全くわからなかった。だからとてつもなく長い140分で苦行のようにつらかったの覚えている。私がこの映画をわからなかった一つの大きな理由は女性経験が少なかったからだと思う。その後私も少しはモテるようになり何人かの女性と同時に付き合い、結婚もしたりすると、この映画の面白さが身にしみてしまうのだな。
この映画の面白いところはそれを不条理で混沌としたストーリー構成で表現している点だ。ストーリーなんてものはそもそもない。どこまでが現実でどこからが空想なのかさえよくわからない。この後こういう感じの映画はずいぶんたくさん作られたがこれが最初の傑作かな。 カメラワークも実に面白いところがたくさんある。 例えば最初に愛人が現れる部分。 最初のカットではとてもキュートで可愛く見えるのだが、 他の物を映して、また彼女にカットが戻るとそのたびにだんだんアップが大きくなっていく。そうすると、かわいい→威圧に変わっていく。 また別なシーンでは 可愛い女がやってきてそれをカメラがフォローしていくと 突然て手前にその子そっくりな醜い年増女が立っていてびっくりする。 そんなカメラワークの工夫が 全般にわたって凝らされている
最後は盛り上がって楽しそうに監督をしているが、そこがそこはかとなく悲しく寂しいね。それまでのシーンでずっと彼の内心を描いてきたわけで。ラストシーンで彼は楽しそうに仕事をしてるが心の中はあーなんだなあなんて。
ただ、やはり長いので疲れる。体力の自信にない人は途中でいっぺん休むことをお勧めする。

タンバラライ