劇場公開日 2020年7月31日

  • 予告編を見る

「フェリーニ独自の連作絵画の美術品」フェリーニのアマルコルド Gustav (グスタフ)さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0フェリーニ独自の連作絵画の美術品

2020年4月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

北イタリアのリミニ地方の四季を豊かな詩情で描いた連作絵画の美術映画。フェデリコ・フェリーニ監督とニーノ・ロータの音楽によるノスタルジーと人間賛歌が愉しい。私的には、「道」「81/2」と並んでフェリーニ映画のベスト。四季折々の変わり行く自然の美しさに囲まれた飾らない人間の生命感が、どのシーンにも溢れて、何とも言えない感動に包まれる。老若男女が小舟に乗り込み沖合で待ち構えて、夜の海上で遭遇する豪華客船レックス号の美しき光の偉容。興奮する人々の歓声にある、文明への畏敬と感動の涙。大雪の後の真っ白な街に突如舞い降り大輪の鮮やかな羽を広げる孔雀の美しさ、その映像表現の独自のイマジネーションに圧倒されます。フェリーニ監督のノスタルジーが、少年を取り囲む家族や街の人々などの多様な視点から捉えられ、短い1年の歳月の中に凝縮されて描かれた、普遍性に至る見事な表現力と豊かな感性。映画館と云うより、民族画家の庶民生活を活写した名画の個展を巡る美術鑑賞に近い興奮に、想像力を刺激される。

Gustav