劇場公開日 2019年9月13日

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「ジャッキーはどうなった?」ハワーズ・エンド kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ジャッキーはどうなった?

2019年10月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 4Kデジタル・リマスター版が公開。映像はさすがに綺麗だし、上流階級の生活ぶりもよくわかる。ウィルコックスの当主であるヘンリー(アンソニー・ホプキンス)はアフリカ植民地に関わる会社を経営して富豪になった様子がうかがえる。フランスと争ってアフリカの植民地を増やし続けていた大英帝国。帝国主義万歳とか婦人参政権を論じていたりと当時の社会情勢も勉強になる。

 ロンドン郊外にあるウィルコックス家所有の別荘ハワーズ・エンド。シュレーゲル家と因縁めいた付き合いにより、長女マーガレット(エマ・トンプソン)が老婦人ルース(バネッサ・レッドグレーブ)の世話をしたことから、「ハワーズエンドはマーガレットに」という遺言を残すまでになったが、他人に譲渡するなんて・・・と、鉛筆書きだったこともあり、ウィルコックス家は遺言書をもみ消してしまう。そのハワーズエンドが両家と低所得者層のバスト夫妻が奇妙に絡み合っていくのです。

 レン・バストはある講義でヘレン・シュレーゲルに傘を持って行かれ、ちょっとだけ親しくなるのですが、これがまた1年後に重大な転機を迎える。「勤めている保険会社は年末に倒産するから今のうちに転職した方がいい」などというヘンリーの言葉を信じ、マーガレットとヘレンはレンに忠告するのだが、予想もしない展開となっていく。

 奇妙な縁で・・・という大まかなプロットは、そこまで膨らませなきゃならないのか。それに過去の愛人問題、現在の不倫、見事に絡まってはいくものの、最終的には殺人事件で終わり?と、どうしても腑に落ちない。そんなことより、貧富の格差をもっと描いてほしいと感じるし、低所得者層を舐め切った言葉で罵倒するなど、いつかは没落するはずの大富豪も何様?といった感じで嫌悪感でいっぱいになる。

 ちょっと古めかしい展開のため、伏線だとか感情線だとかは無視した帝国主義叙事詩みたいな印象も受ける。感情がもっとも現れるはずのヘレンとレンの描写も足りなさすぎ。むしろ内面を抉っていたのは当主ヘンリーの揺れまくる失態だったかもしれません。

kossy