「壮大な叙事詩」遥かなる大地へ odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
壮大な叙事詩
貧しいアイルランドの青年が苦労の末に新天地アメリカで念願の土地を手に入れる話と言ったら身も蓋もないが2時間20分の長尺だからそう単純に話は進まない、むしろ絶対に出会うはずのない男と女、まして新天地で結ばれるなんて奇跡のような物語、そのプロセスをじっくりと味合う映画でしょう。実際の夫婦でもあったトム・クルーズとニコール・キッドマンが熱演しています。
自身もアイルランド移民の子でオクラホマ出身のロン・ハワード監督が思い入れたっぷりに造った壮大な叙事詩です。
観る前は開拓時代の西部劇かと早とちりしていたが開拓史も終焉のアメリカ、物語の第二の舞台となるボストンはファイトクラブや市長とマフィアの癒着、淫売宿などが描かれアメリカの病巣の芽吹きが痛々しい。イタリア人が強いのは映画「ロッキー」を思わせて妙に合点がいってしまった。
クライマックスの陣取り合戦、題名は思い出せないが西部開拓映画で何回か見た記憶がある。早い者勝ちで旗を立てたものが土地を取得できると言う入植者新興策のオクラホマのランドラッシュは1889年から1895年にかけて5回行われている。映画は4回目の1893年9月16日正午に号砲がなったレースであろう。勝てば、なんと20万坪の土地を15ドルの手数料で手に入れることができたそうだ、実際には映画の地主夫婦のように抜け駆けをする者も多かったようでオクラホマ州は別名「抜け駆け州」(Sooner State)と呼ばれたそうだ、不名誉な話ですね。
搾取から逃れた自由の新天地で得た土地も元は原住民からの搾取、自由平等と弱肉強食のダブルスタンダードは根深いのである。名作「怒りの葡萄」にもつづられているが人々が競って手に入れたオクラホマの農地も後の干ばつで荒廃し多くの人が土地を離れたという。
時代や国は違っても安住の地のあることの有難味がひしひしと伝わってくる大作でした。