「夢現」野いちご みつまる。さんの映画レビュー(感想・評価)
夢現
冒頭で老医師イーサクが見る不気味な悪夢のカメラワークと、濃淡なモノクロの映像美が秀逸だ。
当初、この悪夢はイーサクに忍び寄る死を予感させるものだと思っていたが、これはずっと自分の殻に閉じこもったままの彼の心が、既に死んでいることを暗示しているシーンなのかもしれない。
イーサクは名誉博士号の授賞式に出席する為に、息子の妻マリアンを同行させるが、彼女の態度は義理の父親のイーサクに対してどこかよそよそしく、冷たくも感じられた。
普段から人との付き合いを拒絶しているイーサクは、息子夫婦とも距離を置いていたが、彼を極度の人間不信に陥らせた原因が、過去と現実と夢が錯綜する旅の途中で次第に判明していく ー。
人は誰しも自分の過去を振り返ることは出来ても、その過去をやり直すことなんて絶対に無理な話です。
だから人は生きている内は、このイーサクと同じように悔恨の念に翻弄され続けるしかないのでしょう。
私は時に「沈黙」は罪であると言うことを感じました。
スウェーデンの巨匠イングマール・ベルイマン、人生の黄昏時を語るよね。
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