劇場公開日 1981年12月19日

「没後10年の節目には、特撮界として彼が天国で喜んでくれるような作品が公開されることを切に望みます」タイタンの戦い(1981) あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5没後10年の節目には、特撮界として彼が天国で喜んでくれるような作品が公開されることを切に望みます

2021年9月6日
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鑑賞方法:DVD/BD

まさか特撮ファンで、まだ本作を観ていないなんて方いませんよね?
それ程、特撮の歴史では避けて通れない重要作品です

特撮の世界では、2001年宇宙の旅、猿の惑星、未知との遭遇、スターウォーズという一連の名作と同じ括りです

1981年の作品
CGはまだない時代
特撮のレイ・ハリーハウゼンが合成特撮と長年培ったダイナメーション技術を集大成した作品です

本作は監督のデズモンド・デイヴィスよりも、この特撮のレイ・ハリーハウゼンの名前に注目しなければなりません

この人は円谷英二と並ぶ、特撮界の巨人、レジェンドです
特撮の世界では、名前を知らない人は一人もいません

1920年生まれ
円谷英二と中野昭慶の中間の世代になります

特に有名な特撮担当作品としては
1953年 原子怪獣現わる
1958年 シンバッド七回目の航海
1963年 アルゴ探検隊の大冒険
などがあります
どれも観ていないと特撮ファンとは名乗れません

ハリウッドの特撮は、このレイ・ハリーハウゼンとジョージ・パルの二人が切り拓いていったのです

先に上げた特撮映画の超有名作品も、現代のCG全盛の特撮も、彼等が撮った作品群の土台の上に築かれたものなのです

その彼の最後の作品です
特撮だけでなく、クリーチャーの造形、質感、動きにも注目です
彼の作品のイメージは後のRPGなどのゲーム、派生するアニメなど物凄い影響を与えていることは一目瞭然です
マーベルのスーパーヒーローものは、明らかに本作の子孫たちだと思います

ひさびさにみて、美術と衣装の素晴らしさに改めて感嘆しました
5年前程前に開催された古代ギリシャ文明展で見たことのある様々な紋様やモチーフが多用されていました
もちろん本作は学術的な映画ではない娯楽映画なので、なんちゃってギリシャ文明なんですが、それでもそれらしさが濃厚でレベルが高いのです

この姿勢が特撮には大切な要素なのです
SF映画なら、超科学の機械であってもそれらしさが必要なのです
機能と原理が外観から伺え、機器や機構の構成が類推できるものでなければならないのです
その考証が出来ていない作品を子供騙しというのです

単なる合成、爆発、ミニチュア、派手な光線合成
そんなものだけで特撮です、とは言えないことを、本作でレイ・ハリーハウゼンは改めて教えてくれました

生誕101年、2023年で没後10年

彼の亡くなった2013年公開の「パシフィック・リム」のエンドロールには、本多猪史郎と共にハリーハウゼンへの献辞がありました

没後10年の節目には、特撮界として彼が天国で喜んでくれるような作品が公開されることを切に望みます

世界中の特撮マンが競って、墓前に新作特撮映画を供えて欲しいものです

あき240