劇場公開日 1990年2月17日

「オリバー・ストーンのアカデミー監督賞が意外に感じる鑑賞に…」7月4日に生まれて KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

2.0オリバー・ストーンのアカデミー監督賞が意外に感じる鑑賞に…

2022年7月19日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

「レインマン」でのトム・クルーズの演技が
気になっていたところ、
彼の主演作品としてNHKで放映されたので
改めて鑑賞。

しかし、彼の演技以前に、
オリバー・ストーン監督の演出が気になる
鑑賞となってしまった。

国を想う若者が、
積極的にベトナム戦争に臨むものの、
戦友を誤射して失い、
下半身の自由を失い、
彼女への想いも失い、
同じ境遇の面々との付き合いのを切っ掛けに
反戦リーダーとして立ち上がる。

戦場の悲惨さと
帰還後の傷病者の厳しい現実描写こそは
ストーン監督の真骨頂だったが、
全般的に「プラトーン」や「JFK」の
メリハリ性は失われ、
緊迫感の失われた演出に感じた。

また、主人公が誤って撃った兵士の家族への
告白は残念だった。
思い出すのは、エルンスト・ルビッチ監督の
名作「私の殺した男」の結末だ。
殺した相手が敵味方の違いはあるが、
この「私の…」では戦争で息子を殺した真実を
告げずに、己への戒めとして相手の家族に
寄り添う決断を主人公はする。
しかし、この作品の結末では、
今さら真実を遺族に知らせてどうなる、
家族を苦しめた傷口を更に広げるだけでは
ないか、と感じてしまった。

また、オリバー・ストーンらしいラストの
反戦・反共和党むき出しの演出は、
余りにもストレート過ぎて、
逆に映画作品としての
反戦テーマ性を薄めてしまったように思う。
更に言えば、
米国社会の分断を煽るだけかのようにさえ
感じる。だから、
彼のアカデミー監督賞の受賞は
意外に感じられると同時に、
日本側評価のキネマ旬報の第76位の結果には
納得だった。

さて、トム・クルーズだが、彼らしからぬ
二枚目イメージを払拭したかの風体での
演技でチャレンジしたようだが、
それは、例えば
「バージニア・ウルフなんかこわくない」での
エリザベス・テーラーが、
彼女らしい優雅さを捨てた、
がさつな役どころで
評価を受けたのを残念に感じたように、
この作品の彼も、
もはやトム・クルーズ感がなく
残念に思う。
天下の二枚目のトム・クルーズらしい
役どころの演技で、
彼は評価されるべきと考えるのだが。

KENZO一級建築士事務所