三文オペラ(1931)

解説

イギリスの劇作家ジョン・ゲイの手になった舞台劇をドイツ人エリザベス・ハウプトマンが独白し、ベルト・ブレヒトによって台本が書き下ろされ、ドイツの若き作曲家クルト・ヴァイルの作曲によって三幕八場の音楽劇に完成された有名な『三文オペラ』を「西部戦線一九一八年」「パンドラの箱」のG・W・パブストが監督製作した映画で、撮影は、「ウォタルー街」「スピオーネ」のフリッツ・アルノ・ワグナー。主な出演者はルドルフ・フォルスター、カローラ・ネイベル、「拳闘王」を監督したラインホルト・シュンツェル、「カラマゾフの兄弟」「倫落の女の日記」のフリッツ・ラスプ。ヴァレスカ・ゲルト、ロッテ・レーニヤなどである。

1931年製作/ドイツ
原題:Die Dreigroschenoper Beggar's Opera

ストーリー

これは今よりも百年以上も前の昔話、イギリスの都ロンドンで有名な貧民街、ソーホー街を舞台としたオペラであります。いろいろとよからぬことを働くギャングの親分メッキイ・メッサーは、この巷の人気者で今も町の歌い手がそれを歌にして歌っています。馴染みの女給ジェニーの元から帰る道でメッキイは、ふとある母娘連れに目を吸い付けられ、これを烏賊屋ホテルの舞踏会に誘います。娘はメッキイの一味と常に勢力争いをやっている乞食の親分ピーチャムの一人娘でポリイというのですが、メッキイががむしゃらに惚れ込み、否応なしに結婚しようとします。ソーホー街に照る月の下で二人は甘い恋の歌を歌い、やがて何カ所かの倉庫の中でいとも盛大な結婚式が行われます。この式場でポリイの歌う歌が有名な「バルバラ・ソング」であります。ポリイが相手もあろうに多年の仇敵メッキイと結婚したと聞いてピーチャム夫婦の憤慨は一通りでありません。どうにかしてメッキイの居所を突き止めて、警察に捕縛させようと企てます。ところが警察の方では、イギリスの大きなお祭り、聖十字架祭の日が迫ってくるのでその準備に忙しくて他のことは構っていられません。しかし段々にメッキイにも手が廻ってくるのでそれと察したポリイがメッキイを逃がしてやり、その間にこの一味を正道にたちかえらせんものと心を砕き、今まで稼ぎ貯めてある財産で市の大きな銀行を買収しそこで堂々と業務を始めることになります。一方メッキイは根が大胆不敵な男だけに、お別れにソーホー街のお馴染みのバーにやってきます。情婦のジェニイはメッキイがポリイと結婚したことを知ってこれを遺恨に思い、ピーチャムの女房としめしあわせて警察の手入れを助けます。けれど手が入った瞬間ジェニイはメッキイに済まないと思い返し、かえってメッキイをバーから逃がしてやります。折角逃げたメッキイもまた街角で馴染みの女に会い、つい引き止められて今度はとうとう逮捕されてしまいます。メッキイが逮捕されたことを知らず、バーから逃げたとばかり思い込んでいるピーチャムは警察が不甲斐ないと勘違いして大いに怒り、この上は聖十字架祭の行列の妨害をしてソーホー街取締の署長ブラウンに恥をかかせてやろうと決心します。そこでこじきの総力が一斉に動員されます。ポリイの銀行ではメッキイが逮捕されたことを聞くと一万ポンドの保釈金を納めて引き取ろうとしますが、それと行き違いに情婦ジェニイが手練手管で看守スミスを操り巧みにメッキイを逃がしてやります。折角、保釈金を受け取ったブラウン署長も肝心の本人が逃げたと聞いてがっかりします。ピーチャムも今はメッキイが逮捕されたことも知り且つポリイが大銀行を持った事情も知って自分の勘違いを悟り乞食隊の繰り出しをやめさせようとしますが乞食隊の方は騎虎の勢でもうどうにもやめようがありません。聖十字架祭は一時大変乱されることになります。そのおかげでブラウン署長も責任を感じて辞職し、昔馴染みであったメッキイの許に泣く泣くやってきます。そこへピーチャムも己が非を覚って握手をしに現れ一同打ち揃って「大砲の歌」を歌ったりなんかして、めでたしめでたしの幕になります。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

4.5舞台劇の限界とサイレント映画の限界をトーキーならこうして軽々と乗り越えられるという回答を出した作品です

2023年9月22日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

三文オペラ
1931公開、独米合作
白黒トーキー作品

初期トーキーの名作をざっと挙げるとこうなります

1930年1月 巴里の屋根の下 (仏)
1930年4月 嘆きの天使(独)
1930年12月 モロッコ(米)
1931年2月 三文オペラ(独)※本作
1931年5月 M(独)
1931年2月 魔人ドラキュラ(米)
1931年10月 会議は踊る(独)

ご覧のようにトーキー映画の初期において、ドイツが先行して良い作品を色々と製作していたことが分かります

トーキーという技術革新をいち早く導入して、どのように使えばより効果的な作品になるのか
それを他国に先駆けて試行錯誤していたわけです

三文オペラというのは、まあ「大衆演劇」見たいなもんですという意味合いです
原作になった1928年初演の戯曲の題名のままです
その戯曲の元ネタは200年も前から大人気のオペラだそうです

少しミュージカル風味があるからオペラなんでしょう

ドイツ映画ですが、舞台は原作戯曲が演じられていた1920年代のロンドンです
お話は○○新喜劇みたいなもんです
ギャングの親分が、乞食の総元締めの娘ポリイに一目惚れで結婚して大騒動が始まります
実はこのポリイが凄いやり手
警察にパクられた親分に代わってギャング団を率いるのです
終盤は、女王陛下ご臨席のパレードにロンドン中の乞食軍団が現れて大混乱
結局、最後は脱獄したギャングの親分も、娘の結婚に反対して大騒動の発端を作った乞食の総元締めも、親分とは第一次大戦で戦友同士で手心を加えていた警察署長もみんな仲直りして、めでたしめでたしの巻です

監督はゲオルク・ヴィルヘルム・パープストという人
トーキー以前にドイツでは大物監督だったそうです
若い頃3年だけ米国にいた経験があるそうです
独米合作といっても、資金だけのようでスタッフはどうもみんなドイツ人の名前です

舞台劇ではだせないスケールの大騒動を映像で見せて、女優が音楽付きで唄う
舞台劇の限界とサイレント映画の限界をトーキーならこうして軽々と乗り越えられるという模範回答を出した作品です

そんな理屈はさておき、大いに楽しめる作品です

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あき240

4.0貧民街を舞台にした、生命力溢れた楽しいオペレッタ映画

2020年4月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ロンドンのソーホー街を舞台にした、ブレヒト台本のクルト・ヴァイル音楽でG・W・パプスト監督の楽しいオペレッタ映画。ギャングの親分の主人公メッキー・メッサーが、勢力争いで敵視し合う乞食の親分ビーチャムのひとり娘ポリーに一目惚れすることから物語が始まる。そこにメッキーの戦友付き合いからの親友で警察署長のブラウンが加わり、次から次へと話が展開していく。下級市民の機知と度胸が貧民街の暗鬱さを払い除けて、強かな生命力に溢れたおとぎ話風な世界観が面白い。聖十字架祭とそれを妨害する乞食の群衆の対比にある、社会批評の深刻さも併せ持つが、ヴァイルの音楽の楽しさが上回る。ドイツ映画の美点が詰まった傑作。

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Gustav
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