劇場公開日 1977年8月27日

「私達の優柔不断、ヒューマニズムの大切さの覚悟の無さが、21世紀のさすらいの航海をうみだすのだ」さすらいの航海 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0私達の優柔不断、ヒューマニズムの大切さの覚悟の無さが、21世紀のさすらいの航海をうみだすのだ

2020年6月9日
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鑑賞方法:DVD/BD

第二次世界大戦の前夜、強大な経済力と軍事力を作り上げたナチスドイツにどこの国も表立って楯突こうとはしない
ユダヤ人達の運命がどうなろうと知った事ではない
気の毒とは思うが、ナチスドイツと事を構えたくはない
ユダヤ人達の為に戦争になってしまう危険は犯せない
キューバも、アメリカも、ベルギーも、イギリスもどの国も自国の方が大切なのだ
結局、さすらいの航海は解決する
しかしラストシーンのテロップで語られる結末はどうだ
結局、戦争は起こってしまうのだ
それを避ける為にさすらいの航海を引き起こし、一応解決させたものの、実のところ振り出しに戻り、なにも解決してなかったのだ

80年も昔の、日本とは遠い国の、ユダヤ人達の可哀想な物語?

そうだろうか?
チベットやウイグルの人々、香港の人々のことを私たち日本人も世界の人々も傍観している現状は本作と何も変わらない
さすらいの航海は今この瞬間
21世紀のそれも日本に近いところで現在進行形なのだ

中国の経済力、軍事力と事を構えることを恐れて逃げ回っているのだ
国内には、セントルイス号の乗組員になっているナチス情報部員のような人間もいて、中国への抗議をさせないようにしているメディアだってある

21世紀のナチスたる中国との対決が戦争にいたることを恐れるあまり、世界はヒューマニズムを忘れているのではないか?
それは中国の全体主義=21世紀のナチスにつけ込まれていることを見ないふりをしていることと同じだ
自己欺瞞なのだ
本作はそれを教えてくれる
この悲劇を私たちは繰り返そうとしているのだ
日本人もそれに手を貸しているのだ

コロナウイルス禍の中でも、さすらいの航海は実際にあった
2月ダイヤモンドプリンセス号という豪華客船が、各国の入港を断られた末に横浜に入港した
まるで本作のハバナ港での騒動のように、下船させるさせないで大揉めに揉めた末、検査と治療を進めて、最終的には日本は全員下船させたのだ
厄介払いせず責任をもって対応したのだ
かなりもたつきはしたが、ヒューマニズムを日本人は全うしたのだ
誇って良いと思う

コロナウイルスには立ち向かったのに、中国の軍事力には恐れて、日本は何も出来ないのだろうか
私達は他人事として傍観するのか
そもそもコロナウイルスだって、中国は隠していたのだ

私達の優柔不断、ヒューマニズムの大切さの覚悟の無さが、21世紀のさすらいの航海をうみだすのだ

あき240