劇場公開日 1965年8月14日

「ワイラー監督には相応しくない題材だったのでは?」コレクター(1965) KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

2.0ワイラー監督には相応しくない題材だったのでは?

2021年5月27日
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鑑賞方法:DVD/BD

「ミニヴァー夫人」の延長で鑑賞。

「ベン・ハー」等の超大作や
「ローマの休日」等の名作を手掛けてきた
ウィリアム・ワイラー監督としては異色の
題材と言えそうで、それだけに彼の
テーマ選択としては空振り感を
感じてしまう映画だった。

降って湧いたあぶく銭が歪んだ性格の人物に
更に暗転をもたらすとの典型話で、
現代だったら陰湿な展開・描写にしか
ならない題材だが、流石にワイラー監督、
大物らしく無難な表現にまとめてはいる。
しかし、二人の感情推移にウエイトが
かかり過ぎて、ドラマの振幅性が弱く
リアリティにも欠けた印象の作品だ。

そもそもがフレディの人物像の設定に
「コレクター」としてまとめることに
無理はないのか。

「コレクター」的に象徴的なのは、
逃がすように促される瓶に入れられた蝶と
ミランダを同じに見立てた場面、
そしてラストシーンだ。
フレディがミランダに持つ感情は、恋愛要素
が加わるので蝶とは異なるのは理解する。
しかし、フレディの、
女性に腫れ物のように接したり、
彼女の死に際して動揺が激しかったり、等の
彼が拉致犯罪で見せる感情は、
全て歪んだ性格の結果だ。
それらを蝶の収集と同じように「コレクター」
として符合させることに無理はないのか等、
余りにも歪んだ世界を見せられて、
この映画を面白いと思える訳がない。

果たしてこの作品のテーマはワイラー監督に
相応しいものだったのだろうか。

因みに私の
ウィリアム・ワイラー監督ベスト3は、
「我等の生涯の最良の年」
「探偵物語」
「大いなる西部」
です。

KENZO一級建築士事務所