劇場公開日 1947年7月

「一級のメロドラマ」心の旅路 細谷久行さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0一級のメロドラマ

2018年6月16日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

幸せ

この『心の旅路』という映画は、第一にどこにも無理や破綻のない、甘美な抒情と、こころを和ませるストーリーでわれわれ鑑賞者の気持ちを引き付ける一級のメロドラマだと思う。第二に、俳優陣、特にグリア・ガースンの演技とその美貌がこの映画を輝かせている。美貌のみを売り物にする女優だけなら他にも大勢いる。ただ彼女のそれは際立っている。輝くばかりの高貴さでさらにその品性を高めている。演技も見逃せない。目的が達成されるまでひたすらに耐えるその忍耐力の名演技にはわれわれを感嘆させるものがある。更に、終末で夫となるロナルド・コールマンの憂いを帯びた面持ちと渋い演技はグリア・ガースンと息が合っている。こうした空気のような透明感が全体を自然に流れ、先に述べた不自然さや軋みはない。技術的にはロナルド・コールマンの「記憶喪失」をうまく使って物語に巧みな変化を与えている。わたし個人から言えば、ラストでグリア・ガースンがかつての愛の家の前で記憶を取り戻したロナルド・コールマンに「スミシィ」と呼びかけて抱擁するシーンが忘れ難い。

細谷久行