コーカサスの虜

劇場公開日:

解説

捕虜交換のため囚われの身になった兵士と、彼を捕えた一家の姿を描き、反戦を訴えたドラマ。トルストイの小説『コーカサスの虜』の設定を、現代のチェチェン紛争に置き換え、「モスクワ・天使のいない夜」のセルゲイ・ボドロフ監督で映画化。脚本は製作も兼任したボリス・ギレルの原案を、ボドロフ、ギレル、アリフ・アリエフが執筆。撮影は「ヴァーリャ!愛の素顔」のパーヴェル・レベシエフ。出演は「太陽に灼かれて」のオレーグ・メンシコフ、ボドロフの実子セルゲイ・ボドロフ・ジュニアほか。96年カンヌ映画祭国際批評家協会賞・観客賞、ソチ映画祭、カルロヴィバリ映画祭グランプリ受賞。

1996年製作/95分/カザフスタン
原題:Kavajazski Plennik/Prisoner of the Mountain
配給:アップリンク
劇場公開日:1997年3月29日

ストーリー

チェチェン紛争下のロシア。ロシア軍に徴兵されたワーニャ(セルゲイ・ボドロフ・ジュニア)は初めての戦闘で、チェチェン側の待ち伏せに遭い、同行していた皮肉屋の准尉サーシャ(オレーグ・メンシコフ)と共に捕虜となった。ロシア軍の捕虜になった息子と交換するため、彼らを買ったのがアブドゥル・ムラット(ドジュマール・シハルリジェ)。足枷を除けば待遇もいい二人は、暇にまかせて戦争や人生について語り合い、見張り役のハッサン(アレクサンドル・ブレエフ)やアブドゥルの娘ジーナ(スザンナ・マフラリエワ)とも打ち解け、ワーニャと彼女の間には淡い恋心さえ生まれる。だが村人の中には二人に反感を持つ者もいて、二人は銃撃される。自分の息子のことしか頭にないと村人に非難されたアブドゥルは焦ってロシア軍駐屯地へ赴くが、すでに多くの死者や行方不明者を出している司令部は梨のつぶてだ。アブドゥルは二人に母親宛ての手紙を書かせる。手紙を受け取ったワーニャの母(ヴァレンチナ・フェドトヴァ)はロシア軍の大佐(アレクサンドル・ジャルコフ)に掛け合うが埒があかない。二人は脱走を企て、サーシャは途中でハッサンと羊飼いを殺す。だが脱走は失敗、サーシャは殺され、ワーニャは穴倉の中へ放り込まれる。その頃ロシア軍駐屯地では、息子がロシア側に寝返った老人が司令部に乱入、息子を射殺し、捕虜だったアブドゥルの息子までロシア側の流れ弾で命を落とす。もはや捕虜交換は成立しない。ジーナはワーニャの哀願に負けて父には内緒で足枷の鍵を外した。だが脱走直前でアブドゥルは異常に気づく。彼はワーニャを殺しに山へ連れていくが、わざと弾丸をよそに撃って立ち去った。自由になり山を降りて自軍に向かうワーニャの頭上を、爆撃の装備を固めたロシア軍のヘリが通り過ぎた……。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第69回 アカデミー賞(1997年)

ノミネート

外国語映画賞  

第54回 ゴールデングローブ賞(1997年)

ノミネート

最優秀外国語映画賞  
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映画レビュー

3.5人間の行いとしての戦争批判

2020年5月13日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

チェチェンとロシアの民族対立の不安定な政治状況の中で、本当は分かり合える人間同士の無意味な戦争を静かに批判した地味な作品。捕虜となったロシア兵二人の人物描写が優れている。チェチェンの山岳地帯の風景描写も美しく、争う人間の醜さがより強調されている。殺された上官が幽霊になって二度現れるブラックユーモアが、詩的表現を帯びている不思議な感覚もいい。原作がトルストイとは、時代が変わっても人間の行いには進歩がないことの諦観も作品の主張にあるだろう。

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Gustav
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