劇場公開日 1959年6月13日

「恋愛モダニズム」恋の手ほどき nagiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0恋愛モダニズム

2017年5月27日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

20世紀初頭のパリが舞台。

当時の建築や美術は、アール・ヌーヴォーを代表とする、豪奢な曲線美を持つ装飾が良しとされた。とにかく豪華であればあるほど良かったのである。本作でもアール・ヌーヴォーの影響が室内をはじめ、至る所にみてとれる。

だが、同時にこの当時から、新たな建築様式によって近代化が図られていくのである。コルビジュエや、F.L.ライト、ミース・ファン・デル・ローエなどの革新的な建築家によって、建築はその装飾がとられ、シンプルになってゆく。ミースの言葉"Less is More"は有名だろう。

私は、これらの近代化の波が、ガストンの姿と重なって思えるのである。ガストンは、大衆の女性や文化を「Boring」と何度も貶している。そして、自分のありのままの姿を晒し、伸び伸びと生きる変わり者のジジに惹かれていく。ガストンは、ジジが大衆の作法を無理やり習得させられていることに怒りを露わにする。

ジジはパリでは何もかもが恋だと冒頭で言う。その通りなのだ。全ての行動は恋愛のため。恋の手ほどきとして、ジジは作法を学ばされていたのだ。

しかし、本当の恋の手ほどきとは「大衆に迎合せず、ありのままの自分であれ。」というアイデンティティを問うアドバイスだったのだ。革新的なアイデアはいつもマイノリティである。その素晴らしさは後になって気がつくもので、大抵は多くの人の批判を受ける。ガストン、ジジ、2人ともお互い自分らしさと周囲の批判との間で葛藤を抱え、苦悩する様子が、ミュージカルのサウンドに乗せて届けられる。そういう意味でもやはりこの邦題の素晴らしさが理解できるだろう。

そしてラストの、ジジの決意の言葉「みじめでもあなたと一緒にいたい。」これが答えだ。

20世紀初頭、文化とともに、恋愛も近代化の手ほどきを受けたのだ。

nagi