劇場公開日 1982年9月25日

「社会構造の変遷の予告」ゲームの規則 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0社会構造の変遷の予告

2019年7月11日
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鑑賞方法:VOD

主にフランスはパリ郊外のコリニエールの別荘の宏大なお屋敷に野狩に集まった上流階級の人々と、そのお屋敷の使用人達のお話です

侯爵夫妻のW不倫のお話を軸に、奥様付きの侍女も色々とお騒がせで上も下も騒動が持ち上がるというもの
たいしたお話ではありません

題名のゲームの規則とは、社交界のラブゲームのお約束ごとのことです
嘘こそが社交界の規則であると監督自身が演じるオクターブが語ります
つまり監督は虚構こそが上流階級の実態であると語っているのです

終盤に英雄が、まるで野狩で撃ち殺される兎のように粗野な森番の猟銃で呆気なく撃ち倒されます
長い野狩シーンはこの殺人シーンのためにありました
英雄はご丁寧にも毛皮のコートを手にしています

将軍は侯爵が事故として事件を処理したことを肯定してこう語ります
階級を守ったのだと
このような人間は今にいなくなるだろうとも

本作は1939年の製作ですから第二次世界大戦突入の直前の作品です
本作で描かれた社会階級は戦争を経て将軍の予想した通りになったわけです

ラストシーンはそのお屋敷から去るのは、上流階級でもなく、その使用人でもない二人の人間です
オクターブとオスカー、その二人の人間は戦後の人間と社会を象徴し予告していたのです

つまり本作はドタバタコメディの娯楽作品の体裁でありながら、実はこのような社会構造の変遷を予告していたのです
本作が高く評価されている意義はそこにあるのではないでしょうか?

カメラワークが面白く独特です
長回しのパンショットで役者を追いかけます
その映像には奥行きをつけてあり、前景の役者の芝居を写していながら、背景に別の役者達が別の芝居をはじめています
カメラが切り替わって、今度はその背景の役者達が前景となり、また長回しのパンショットで歩き回るのを追いかけます
この繰り返しで、常に画面には前景と背景の二つの芝居が同時に進行してスムーズに繋がって物語が途切れなく続いて行くわけです
このようなカメラの働きで、観客の注意をそらすことなく最後まで退屈せず厭きずに観させてくれるのです
監督の力量はやはりただ者ではないと思いました

あき240