劇場公開日 2023年12月22日

「「ブラザー・サン シスター・ムーン」鑑賞が楽しみになった」神の道化師、フランチェスコ KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5「ブラザー・サン シスター・ムーン」鑑賞が楽しみになった

2022年8月19日
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従来だったら、
話の時系列順に作品鑑賞するところだが、
「ブラザー・サン シスター・ムーン」が
フランチェスコの成長期の話
と聞いているので、
若い頃のどんな体験が彼を聖人化させたのか
を探る意味で観た方が、と思い、
逆の順番だが
聖人後のこの作品をもう一度先に観てから
「ブラザー…」を初鑑賞することにした。

この作品、ロッセリーニ作品の
「無防備都市」「戦火のかなた」「ドイツ零年」
等々の戦中戦後物の
追い詰められた主人公達の深刻な描写とは
異なり、
信徒の純心さが故の不器用な布教活動が、
かなりコミカルに描かれていた。
このコミカルさは実際の修道士が演じた
ために生じた、素人ながらも
彼らのアイデンティティ溢れる演技と、
ロッセリーニ監督の
見事な演出の賜物だったろうか。

特にジネプロが布教に行ったエピソードが
面白い。
彼の純心さが、隣町を包囲した野蛮人集団
のボスの心までも懐柔して
その包囲を解く結果までももたらした。
そして、
その野蛮人のボスの存在感は圧倒的だ。
彼が「無防備都市」の神父役の俳優とは
気が付かなかったが、まさに
助演男優賞級の演技ではなかったろうか。

フランチェスコの精神が
この世の中に浸透していたら、
今日の戦争の恐怖も、
地球環境の危機も、
格差社会も、
何もかも無かったのではないかと思わせる。
ただただ神の存在を信じ、
施しに徹するフランチェスコの境地は、
私も含め、
人類が失ってしまった“心”なのだろう。

私にとっては、「ブラザー・サン…」鑑賞が
控えているためか、
初めてこの作品に接した時よりも
大変興味深く観ることが出来た。

さあ、「ブラザーサン…」では
この心境に至ったフランチェスコの
若き日々をどう描いているだろうか、
初鑑賞がますます楽しみになった。

KENZO一級建築士事務所