劇場公開日 1979年4月21日

エーゲ海に捧ぐのレビュー・感想・評価

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1.5ギリシャの観光映画に終わる

2021年11月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

画家池田満寿夫氏が芥川賞受賞で一気に時代の寵児となり脚光を浴びる。「限りなく透明に近いブルー」の村上龍氏と同じく、その話題性から映画制作に至ることになったが、残念ながらどちらも感心するものでは無かった。村上監督作は、まだ映画としての形を良くも悪くも整えていたが、この池田監督の挑戦は、完全に失敗に終わる。小説の内容から映画表現の限界があることは承知していた。それよりもストーリー自体が単純で面白くない。知恵遅れの少女の設定も凡庸で、また作為的に処理されている。結局、風光明媚なギリシャの観光映画に止まる。殆ど素人の俳優の演技にも見るべきものが無い。画家や小説家がひとりで成立する創作に比して、やはり映画は様々な職人たちの技術の集積の上で、監督の映画愛と演出の個性が表現できないと成立しないと改めて認識する。その意味で映画監督の才能は、オーケストラの指揮者に求められるものに近いと思う。

  1979年 9月5日  飯田橋佳作座

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Gustav