劇場公開日 2017年10月7日

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「尊敬する映画批評家さんのこと」動くな、死ね、甦れ! hideaquiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0尊敬する映画批評家さんのこと

2020年10月30日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

学生の頃、尊敬し過ぎるがゆえに、その人が高く評価するものは「かけねなしに」クオリティの高いものに違いないと期待して、しかもタイトルがめっちゃカッコいいし、これを見なければ「映画をよく見ます」とは名乗れないんだくらいな高揚感で見に行ってみたら、まあ褒められる感じはわかるんだけど、そこまでスゲエって感じもしないって感想だったことを思い出す。期待を必要以上に煽るコピーのせいでもあったし、またまったくもって個人的な好みの問題で、僕がグアルディオラのバルサのサッカーが好きじゃない、と言うのもそれだ。

若かったし、早く映画の教養を身につけたいと、その映画批評を丸呑みしようとして読みまくり、作品を見まくって、ときおりピンとこないのは自分の映画体験が足りないからだと思おうとした頃とは違って、その頃の倍以上の年齢になったいまは「いやー、気持ちはわかるけど、俺の好みじゃない」って虚勢を張らずに言えるようになった。麻疹みたいなもので、若くて田舎者ゆえに宗教的に思い入れてしまうことってある。
その批評家だって淀川長治さんの賛辞に同意できてないのに調子を合わせていたりしたのだ。「その時代に生まれることも才能だ」とかなんとか言って。

とは言え、この作品はその当時「かけねなしに」衝撃だった。その頃までに見たそれほど数多くもない映画のどれにも似ていなくて、剥き出しで、荒々しくて、不衛生で、共産主義っぽかった。

ソ連が崩壊し西側に発見されたレンフィルムの特集上映が大阪の近代美術館だかどこかであって、そのパネルディスカッションに、その尊敬する映画批評家が登壇するというので、遠く神戸は舞子から駆けつけた。彼を直接見たのはそれっきりだ。

いまもその批評家と、その弟子筋の作品や批評は気にならないわけではないけれど、自分の肩の力はすっかり抜けている。いい映画をたくさん教えてもらったし、学ばせてもらった感謝もある。ずっとお元気で現役でいていただきたいと願う。そんな思いとともに、この作品を再び見た。かつての先生は、いくつになっても先生なんだ。

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hideaqui