劇場公開日 2005年1月29日

「村上春樹のパブリックイメージをそのまま落とし込んだ作品、まるで鉱物の様に」トニー滝谷 たいよーさんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0村上春樹のパブリックイメージをそのまま落とし込んだ作品、まるで鉱物の様に

2021年8月28日
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鑑賞方法:VOD

知的

難しい

原作未読。私にとって初の村上春樹原作の映画。彼の作品のパブリックイメージそのまま落とし込んだような深い作品。1万円はしそうな舞台を観ているような気分だった。

孤独な男、トニー滝谷。彼に滲む孤独の背景と生き様を淡々と綴る。語りとセリフ、音楽がモノトーンでありながら、咀嚼できぬ重みを乗せてストーリーを彷徨っていく。右から左へ流れる映像は、過去から未来へと続いていく無情さに写り、思い出して立ち止まった時の彼の背中は、どこか儚くも思えた。

そんなトニー滝谷を演じるのはイッセー尾形。なんだか不気味でありながら、作品の色を作れてしまう天才的な俳優だと惚れ惚れする。そんな滝谷の相棒となる女を演じるのは、宮沢りえ。透明感の中に潜む空っぽな心が時々顔を覗かせる。行動に意味ありげなモノすら感じられて、ますます重い。また、語りが西島秀俊だったことが意外だった。『ドライブ・マイ・カー』の予習がてらこの作品を選んだので、ラッキーとは思った。ただ、ホントに異質な匂いのしてくる作品。

このあと色々と考察を漁ってみようと思う。なぜこの作品が評価されているのか、漠然とした感情しか掴めていない自分に問いながら観てみたいと思う。鉱物のような硬い映画だった。

たいよーさん。