マインド・ゲーム

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劇場公開日:

解説

「アニマトリックス」などで知られるSTUDIO4℃が、ロビン西の同名コミックをアニメーション映画化。劇場版「クレヨンしんちゃん」で注目を浴び、シュールな短編「ねこぢる草」を手がけたアニメーターの湯浅政明が長編初監督に挑んだ。幼なじみの初恋相手みょんちゃんに再会した西だったが、借金の取り立てにきたヤクザに惨めな殺され方をしてしまう。未練たっぷりの西は神様に逆らって再び現世に舞い戻るが、今度は巨大クジラに飲みこまれてしまい……。一度は死にながらも生き返った男の生きざまを、実写や3D、2Dなど多彩な映像表現を駆使してハイテンションかつエネルギッシュに描ききる。声優は今田耕司、藤井隆ら吉本芸人が多数。

2004年製作/103分/日本
配給:アスミック・エース
劇場公開日:2004年8月7日

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映画レビュー

5.0湯浅監督作品の原点、終盤のエモーショナルな主人公の脱出劇は必見

湯浅政明監督の初長編監督作品。湯浅監督の作品が好きで未見の方にはぜひ見ていただきたい1作です。初めての作品には作家のすべてが詰まっていると言いますが、本作にものちの湯浅監督作品に見られるさまざまな要素が多く見られます。ユーモラスで生き生きとしたアニメーション、実写をコラージュするなど枠にとらわれない絵作り、人生賛歌の物語などの要素など……。とくに終盤のエモーショナルな主人公の脱出劇は必見の快作です。

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五所光太郎(アニメハック編集部)

4.5湯浅政明の最高傑作

2022年11月18日
iPhoneアプリから投稿

湯浅政明の監督作品でどれが一番好きかと問われれば私は今でも本作を挙げると思う。物語そのものは、ヘタレが原因で一度死んだ男が、何事にも全力で生きることを誓って二度目の人生を突っ走るという、言ってしまえば昨今の異世界転生モノと大差のないビルドゥングス・ロマンなのだが、演出がとにかくすさまじい。

湯浅はイマジネーションを知性のふるいにかけることなくそのまま出力するという離れ業を、まるで慣れ親しんだ身体運動か何かのように平然とやってのける。パースと重力法則を捻じ曲げて自由闊達に動き回るキャラクター、生き物のようにのたうち回る背景オブジェクト、緩急自在のカッティング。物理的桎梏によって結合を阻害されていた肉体と精神が、ここでは熱い抱擁を交わしながらいつまでも激しく踊り続ける。『クレヨンしんちゃん』『ちびまる子ちゃん』をはじめとする子供向けアニメで、子供の自由で未分化なイメージの奔流を作画と演出に落とし込む訓練を重ねてきた彼だからこそできた、まさにアニメ表現の一つの極点だ。

殊にラストシークエンスの約5分にもわたる一連のモンタージュは奇跡と形容するほかない圧巻の出来だ。それぞれのキャラクターの人生の軌跡が実際の歴史と混じり合いながら、ものすごい速さで未来、つまり現在を目指す。ここでは喪失も再生も個人も歴史も等しく一瞬の運動として過ぎ去っていく。我々はただその痕跡に圧倒的で不可逆的な時間の流れのダイナミズムを痛感するばかりだ。

これは絶望でもあり希望でもある。どれだけ辛いこと悲しいことがあっても、時間の流れはすべてを前へ前へと押しやってしまう。つまり決してやり直しはきかない。しかし翻って言えば、どうであれ生きてさえいれば、我々は前に進み続けることができる、ということでもある。命を絶つ、あるいは絶たれない限り、このカオスなモンタージュは絶えず更新され続けるのだ。その結果幸福を得るか不幸に沈むか、それはわからない。ただ、すべてはつまるところ均等な一瞬の運動となって圧倒的で不可逆的な時間の流れの中へと収斂していく。ねえ、ほんならいっそ開き直って好き放題にやってみたらええんやないの?

シークエンスが船上に寝転ぶ老爺の幸せな「現在」に辿り着いたところで、モンタージュの奔流は一旦の終結を迎える。そして「MIND GAME」というタイトルが悠々と真っ白な画面上に現れる。文字の内側はくり抜かれており、そこには雲の流れる青空が映し出されている。私はこれによく似た絵画を知っている。ルネ・マグリットの『大家族』。人々の織り成す無数の人生を、湯浅は大家族になぞらえ、そして抱擁してみせる。まだ中学生だった頃、このシークエンスをはじめて目の当たりにしたとき、アンタは神か仏にでもなろうとしてるのか?と神妙に唾を吞み込んだことを私は思い出した。

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因果

4.0確かに、エネルギーの塊のような絵に圧倒される一作

2022年9月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

冒頭から尋常じゃない映像表現と画面から漏れ出る圧に面食らい、そのまま文字通り疾走する物語を体験しました。これは確かに、色々な人が「とにかくすごい」、「言葉には言い表せない」と評しているのも納得です。しかもたまたまみることのできた回は、一回限りの夜間上映で、現実の状況も『マインドゲーム』鑑賞に最適化されていたのでした。

物語としては実はそれほど複雑ではなく、「今、物語上何が問題となっているのか」を意外に丁寧に提示してくれるので、その点で迷子になることはありません。しかし一つの挿話から次の話に移る際の飛躍がものすごく、さらに湯浅監督渾身の超絶作画と、時にはすごいのかなんなのか良く分からない美的センスが炸裂しているため、ぱっと見るとアナーキーな印象を受けてしまうのです。カット割も時として時系列も文脈も無視しているようなインサートカットを多用しているのですが、徐々に意味不明なショット同士の繋がりが見えてくると、冴えない男と何を考えているのかよく分からない女性によるハチャメチャな逃避行というレベルを超えた、「時間」や「運命/必然」を描いた作品であることが分かってきます。

『日本沈没』(2020)は正直言って途中で白けてしまった観客なのですが、本作は湯浅監督のむき出しの思考の一端が見えたようで、とても面白く鑑賞しました。あまり物語を説明的に語らず、映像だけでごり押しする方が作家性に合っているんでは…。

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yui

4.0世界がいい加減なのは神様のせい。

2022年8月19日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館
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bloodtrail
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