劇場公開日 2004年7月31日

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「8月の、この季節に絶対お薦めの名画はこれだ」父と暮せば Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.58月の、この季節に絶対お薦めの名画はこれだ

2013年8月14日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

楽しい

もう直ぐ敗戦記念日がやってくる。日頃から、楽しい映画などを観て、日常の個人的なストレスの解消を図る為、或いは純粋に映画を観る事が好きで、映画観賞を趣味としている映画ファンにとっても夏が来れば必ず思い出す事が一つある。それこそは、戦争話の映画が公開される事なのだ。
出来る事なら、そんな暗いテーマの戦争映画などには、目も触れずに冷房のギンギンと効いた気持の良い映画館で楽しい映画を観たいのだが、しかし、50歳になってしまった自分でさえも、夏休みの宿題の課題図書の感想文でも書く様な気持で、絶対に戦争映画を観るのは今年こそ、ゴメンだ!遠慮しようと思っていても、やはり1本は必ず観てしまうのが、毎年の習慣行事化した、この時期に公開される敗戦に絡むテーマの映画作品観賞なのだ。
そこで、今年公開されている戦争映画の代表作品と言えば、「少年H」そして「終戦のエンペラー」が有る。しかし、この夏1番のヒット作映画と言えば、「風たちぬ」もゼロ戦に纏わるお話なのだから、戦争映画と言えない事もない。
私の個人的な印象では、「少年H」は空襲や、戦争時代の生活を描いているものの、戦争映画と言うよりは、父と息子の交流を中心に描いた物語と言う印象が強かった気がしてならない。
そんな時に、戦争の悲劇を描いているのだが、非常に文学作品としても素晴らしい作品で有り、胸に迫るものを感じられた映画がこれから、お薦めする、「父と暮せば」なのだ。
原作は、今は亡き、井上ひさしの手による、こまつ座の代表作の一つとなった2人芝居の映画化である。
原作が、井上ひさしの舞台劇である為に、この映画程俳優の力量が大きく作品の良し悪しに左右する作品もないと思うのだが、この作品のキャスティングは見事だった。
作品の題名でもある父を演じているのは、こちらも残念では有るが、現在は故人となってしまった原田芳雄が福吉竹造を確かな芝居で魅せる。そして誰が、この父と暮らしているのか?と言えば、この映画の決め手であるヒロイン、一人娘の福吉美津江を演じていたのは宮沢りえ。
宮沢りえと言えば、本当にマスコミからつまらないスキャンダルばかりをまくしたてられていたが、雑誌モデルで芸能界デビューし、子役からアイドル俳優へと育って、そして現在では演技派女優へと立派な成長をした、数少ない映画女優である。
原田と宮沢と言う巧い俳優が出演し、そして彼女の淡い恋の相手役の木下を演じていたのが、浅野忠信であって、この映画を私は何度も何度も繰り返し観て、セリフを憶えてしまったほどだが、それでも、今再度このレビューを書くに当たり、見直しても涙なくしては観られない名作品だ。
この映画は数々の映画賞を受賞しており、TVでも何度も放映された。今年の2月に亡くなられた高野悦子さんが選ぶ名画劇場に於いても、この「父と暮せば」は放送された作品だ。
未だ、ご覧になっていない方には勿論、この作品を観た方にも、8月の敗戦記念日に、戦争がテーマの映画を観るなら是非この作品を推薦したいと思うのです。

ryuu topiann