劇場公開日 2002年9月14日

「記憶」千年女優 赤ヒゲさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 記憶

2025年10月11日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

もう20年以上前の作品ですが、斬新さに引き込まれました。往年の大女優・藤原千代子(声:荘司 美代子、小山 茉美、折笠 富美子)が過去を回想するというだけならともかく、そこに思い出の「鍵」をモチーフに生涯の恋をからめ、数々の出演作のシーンをつないで描いていくアイデアが素晴らしい(20~40代の声を担当した小山 茉美さんは、則巻アラレちゃんの声優さんですね)。回想しながら現実と空想が入り交じり混沌としていくところは、人間の記憶の曖昧さが活かされていて、とてもスリリングかつ共感しました。音楽も非常に効果的に作品を盛り上げていましたが、今敏監督が音楽を重視した作品とするため、自らの好みで平沢進に依頼されたようです。千代子が生涯想い続けた「鍵の君」の声(山寺宏一)がカッコよかったです!今敏監督(1963-2010)が描く「現実」と「虚構」が入り交じる描写は、日常的に夢をみたり空想したり、或いは何処か遠い国のニュースをみたりしているときに感じていることと似ていて、人間の記憶を巡るとても興味深い視点だと感じます。「あれほど愛してた人なのに、もう顔も思い出せなくなってしまった」と千代子が悲しむシーンがとても印象に残りました。

赤ヒゲ