鷲と鷹(1957)

劇場公開日:

解説

「十七才の抵抗」の井上梅次が脚本、監督したアクション篇。撮影は「勝利者」の岩佐一泉。主演は「海の野郎ども」の石原裕次郎「異母兄弟」の三國連太郎、「白夜の妖女」の月丘夢路、「素足の娘」の長門裕之。ほかに浅丘ルリ子、澤村國太郎、二本柳寛、柳沢真一、安部徹、西村晃など。日活スコープ、日活イーストマンカラー。

1957年製作/115分/日本
原題:The Eagle and the Hawk
配給:日活
劇場公開日:1957年9月29日

ストーリー

深夜の波止場で、貨物船「海洋丸」の機関長が殺された。シンガポールで買ったナイフで刺されたことだけ判った。出航間際二人の新入りが乗込んでくる。「陸のあばれ者」千吉と佐々木である。もう一人、鬼の鮫川船長の一人娘明子も、一人では淋しいと船長室に泊ることにする。佐々木は目つきが鋭く、千吉はふてぶてしい男だ。その態度に怒った狂暴な松は、ナイフを光らせて突きかかる。佐々木の仲裁で喧嘩が収った時、甲板で女の密航者朱実が捕まった。彼女は惚れた千吉を追ってきたのだ。清純な明子もいつしか男らしい千吉に魅かれていく。ある夜、朱実は松に襲われるが、千吉が救い、松を完全にノス。朱実の持っていた一枚の新聞から船長は機関長殺しの犯人は千吉だときめつける。機関長の息子吾郎は船長から親の仇を打てとそそのかされるが、その気にならぬ。千吉に殺人の理由をきくと--二十年前海洋丸を買った三人(船長、吾郎の父、千吉の父)が仲間割れし千吉の父が他の二人に殺されたからだという。今度は船長だ。吾郎は復讐の無意味さを説くが、千吉は納得できぬ。が、明子の明るい姿に接するうち、次第に千吉の荒んだ心も和らぐ。復讐の誓もグラつき始めた。朱実は千吉と明子の間を嫉妬し、猟銃で狙うがどうしても撃てなかった。そんなある日、船荷が全部ニセ荷であることが判明する。船長の航海サギだ。嵐の夜、激浪に呑まれた吾郎と佐々木は千吉に救われたが、船長は水死した。千吉は実は刑事の佐々木に自首を誓うが、船が門司に着いた時、佐々木は千吉と朱実を二人だけで降りて行かせる。甲板では明子が涙で見送っていた。

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映画レビュー

4.5日活無国籍アクション映画の輝けるスタートにして金字塔です

2020年2月21日
Androidアプリから投稿

これは面白い!
日本映画の枠を超えた傑作アクション映画です
しかもワイドカラー

タイトルバックの背景はそのワイドカラーの画面一杯に夕陽に染まる大海原
しかもカメラは船上にあり、ローリングの具合からヨットのような小船ではないと分かります
その映像はまるでデビッドリーン監督作品のような雄大な映像美をみせており、おおーっと前のめりになりました

それだけでなく全編どのシーンでもカメラと照明がいい仕事をしています
映像自体が日本放れしているのです

1000トンの貨物船を貸し切って、東京から門司まで実際に航海してその船上で粗方のシーンを撮影しているのです

無国籍風、よくいえば日本放れした貧乏臭くない設定、衣装、展開、台詞です

それが1957年昭和32年の作品なんだから恐れいります

日活アクション映画路線の方向性を決定づけた成功作品かつ重要作品だと思います

鷲と鷹という題名は、二人のいずれ劣らぬヒーローがいるということです
鷲と鷹、どちらも大型の猛禽です
鷲は些細なことでも気が付き、獲物に襲いかかる
鷹は高いところから獲物を見つけて一気に飛びかかる
もちろん鷲は石原裕次郎の演じる主人公千吉です
鷹は三國連太郎が演じる謎の男佐々木のことです

物語は冒頭の殺人事件こそ陸上シーンですが、出港間際の貨物船に主要な登場人物が全員揃うとあとはもうほぼ洋上の貨物船で進行します

実際に俳優達を乗せて撮影しながらの航海です
一部の船室や暴風雨のシーンこそセットですが、大海原を緩やかにローリングして進んでいく、その1000トンの貨物船の船上で撮影されています

石原裕次郎のカッコ良さたらありません
23歳です
初登場シーンだけで痺れます
高身長、長い脚、鞭のようにしなやかな肢体、逞しい筋肉、大きくシャツの前をはだけてみせる浅黒い日焼けした肌
少年のようなあどけなさの残る爽やかな笑顔
白黒作品の太陽の季節、狂った果実で観る裕次郎もカッコ良いのですが、本作のこの裕次郎はもう別次元です
カラーのワイド画面に登場する石原裕次郎はスターそのものです

三國連太郎は本作では若い兄貴のような男です
34歳です
上半身をいつも裸で逞しい筋肉を見せています
終盤は真っ白な麻のスーツを小粋に着こなし颯爽と現れます

そしてヒロインも二人
浅丘ルリ子17歳と月丘夢路35歳です
浅丘は船長の娘役、月丘は裕次郎の演じる若いお恋人を追いかけていた酒場女役
どちらも密航してきた設定です

浅丘ルリ子の美しさといったら!
小さくて細くて可憐で、まとうAラインのノースリーブのドレスの似合うこと!
一目でノックアウトされました

月丘夢路も負けてはいません
登場シーンこそルンペン風ですが、次のシーンからは女盛りの肢体、高い鼻筋、尖った顎、日本放れした美貌です
特に胸の大きさは目が釘付けになります
可憐な浅丘ルリ子が本命でも、目の前に月丘夢路がいればつい目が眩んで……という存在です
35歳でも浅丘ルリ子には負けてはいないのです
本作の井上梅次監督は彼女と翌年結婚しています
目がくらんだくちかも知れません

そして脇役陣もまたすごい
気の弱い一等航海士役の長門裕之始め、甲板長役の澤村國太郎、料理人役の柳沢真一、甲板員仲間の西村晃、安部徹といった芸達者ばかり

脚本もこなれていて、特に終盤の時効間際の甲板長のびくつき、艀のなかでの三國連太郎の憎いセリフ
気の弱い航海士が、そっと浅丘ルリ子の肩に手を回す
全て伏線の回収です

クライマックの暴風雨のシーンは大迫力です
次回作嵐を呼ぶ男の嵐を呼ぶぜの文言は本作を思い出す仕掛けになっているわけです

本作の劇中歌の鷲と鷹と、この嵐を呼ぶ男の主題歌はカップリングのシングルとなって発売され、当時の大ヒットシングルになっています

日活無国籍アクション映画の輝けるスタートにして金字塔です

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