劇場公開日 1996年10月26日

「古畑任三郎をまぶしたトヨエツ・金田一」八つ墓村(1996) talismanさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5古畑任三郎をまぶしたトヨエツ・金田一

2021年8月13日
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鑑賞方法:VOD

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豊川悦司の金田一は背が高くてかっこいいし明るいし明晰でさっぱりしていて饒舌。饒舌であればあるほど、石坂浩二の少し低めの声の良さとしゃべり方がいかに耳に心地よかったかわかった。トヨエツは話さない方がよくてあの大きな手と長い指を見ることができればそれだけで満足、がTVドラマ「愛していると言ってくれ」を見た後の自分の感想だったことを思い出した。この映画でもトヨエツの手と指がよく映っていた。そして早口で滔々と話す様子はまさに田村正和の古畑任三郎。この映画公開前に古畑ドラマはもう始まっていた。西村雅彦が時計屋さん役でこの映画に出演していて嬉しかった。西村雅彦は本当に上手い!

渥美清・金田一の「八つ墓村」より登場人物は増えているが、スピード感ある構成と台詞(ちょっと説明しすぎでもあったが)が良かったのでこんがらがることもなく冗長にもならず説得力あるストーリー展開。原作(内容は忘れてます)には居る慎太郎を登場させたことで、美也子の気持ちも職業も納得がいくものになった。美也子役の浅野ゆう子、良かったです。

村の小さな郵便局が大事な役割を担っていて時代を感じ吉田日出子がほっとする空気を作ってた。郵便局場面の始めと終わりで同じ男の子がおつかいで「つかあさい!」と来るのはシンメトリーで美しくお気に入り!慎太郎の妹役の場面は少なかったが映画がきちんと締まる役割を担っていた。前回はショーケンが演じていた辰弥役は童顔でどちらかというと少年なので、春代(萬田久子)から好きだと言われたのにはかなり違和感を覚えた。辰弥くんの職場の工場で生産されているのが「ヨツワ石鹸」!いいねー!

時代設定は昭和24年。横溝作品は戦前・戦後を絡ませて初めて生きるのではないだろうか。日本家屋の街並みや枕屏風といったザ・日本のアイテム、機関車(市川崑は機関車や列車フェチなんだろうか?「鍵」を思い出す)や長持ちからはみ出る布ーはみ出し布は障子であれ道成寺の鐘であれーやモノクロ画面に真っ赤な血糊がピュー!は市川崑の金田一シリーズの映像美に貢献する大事な素材だ。

エンディングで流れる小室等の歌はなんか合わなかったなー。残念。

talisman
MAKOさんのコメント
2021年10月5日

西村雅彦は確かに上手いですね。もっと評価されていい役者さんだと思います。
実は主演の伊丹十三監督「マルタイの女」
オススメです。

MAKO
アキ爺さんのコメント
2021年8月15日

確かに古畑任三郎の影響大きそうですよね。田村正和は偉大でした✨

アキ爺
近大さんのコメント
2021年8月13日

自分はさすがにブームの頃は産まれてませんでしたが、それでも学生~20代に原作本はかなり読みました。
原作で好きだったのは、名作と謳われている作品以外に『夜歩く』『三つ首塔』などでした。

市川作品では『犬神家の一族』がやはりダントツ一番なんですが、『ビルマの竪琴』も忘れ難いです。
ミステリーにドラマ、文芸モノ、ドキュメンタリー…。
市川崑監督、大好きな監督の一人です、今でも。

近大
近大さんのコメント
2021年8月13日

コメントありがとうございます。

インパクトは野村版ですが、比較的原作忠実のまとめ方はこちらでしたね。
よくカット/脚色される美也子と慎太郎の恋、慎太郎の妹・典子なども描写して、原作読んでいた者としては納得いく仕上がりでした。

でもいずれ、原作完全忠実の映画化を観てみたいです。

近大