劇場公開日 1978年1月21日

「予定調和では傑作は生まれない 現場でより良いもの作りたいという互いの思いがぶつかりあってこそ化学反応が生まれるという見本だと思います」柳生一族の陰謀 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0予定調和では傑作は生まれない 現場でより良いもの作りたいという互いの思いがぶつかりあってこそ化学反応が生まれるという見本だと思います

2020年8月6日
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鑑賞方法:DVD/BD

本作の予告編の謳い文句にはこうあります

時代劇復興第一回作

時代劇のメッカ
東映京都が
全精力、総力を結集して作る
本格時代劇巨編
12年振りに帰って来た

現代のエース深作欣二監督
時代劇に挑む
骨太い人間たちによる
骨太いドラマ

ロマンとアクションの超大作

別の予告編でも

雌伏12年!!
時代劇復活を賭して
今、・・・・・
東映が総力を結集してはなつ
本格的時代劇巨編

全く持ってこの宣伝文句に偽りなし!
その通りの製作方針で、意図したとおりに完成したと言えます
最強最高の布陣で臨んでも、思った通りの結果にならないのが映画の怖いところです
ですが、本作は会社が思った以上の大成功作として完成したのです

むしろ監督や俳優たちも、当人たちが考えていた以上の傑作に化けてしまった作品と言えると思います

深作欣二監督は自分が撮るからには、現代的な時代劇にしようと意図していました
仁義なき戦いでみせたような迫力ある闘争シーンに仕上げています

それに対して萬屋錦之介は本当の本格時代劇とは何かを示そうとしています
所作や言葉遣いは、現代的どころかより歌舞伎的に強調している程です

この対立構造が画面一杯に緊張感を張り詰めさせています
それがガスが充満したかのように、あのクライマックスで大爆発を引き起こしているのです

この対立構造がなければ、あの神がかったシーンは不発に終わったことでしょう

それだけが本作の成功の要因ではありません
千葉真一は自分の提案した原案がとおりイキイキしています
柳生十兵衛三厳役が、その後彼の十八番の役所になった程です

脇役、端役、スタント達全員が、この作品で兜首を上げるのだ!と我先にと張り切っています
美術、衣装、メイク、ヘアのスタッフ
もちろん照明、撮影、音楽、音響もみんなノリノリで頑張っていることがよーーく伝わってきます

これらがみな掛け算となって、相乗効果を生み全編が面白い豪華作品となったのです

これだけ豪華ですから正月やお盆に観たくなるナンバーワン時代劇になったのだと思います

そうそうたる顔ぶれの俳優たち
三船敏郎、芦田伸介、山田五十鈴といった重鎮以外にも中堅どころがずらり

なかでも最高なのが、成田三樹夫の烏丸少将文麿
あの癖のある顔立ちが役所にピッタリとはまり過ぎる程でした

最高の布陣で臨んで、最高の結果を挙げてみせた
あるようでそうない見本だと思います
予定調和では傑作は生まれない
現場でより良いもの作りたいという互いの思いがぶつかりあってこそ化学反応が生まれるという見本だと思います

あき240