もっとしなやかにもっとしたたかに

劇場公開日:

解説

ロックバンドのグルーピーの少女との出会いによってニューファミリーを志向している妻子ある青年の自分の生活に対する疑問や苦悩を描く。小林竜雄の一九七八年度城戸賞準入選作の映画化で、脚本は「新・人間失格」の小林竜雄、監督は「帰らざる日々」の藤田敏八、撮影は「肉の標的・奪う!」の前田米造がそれぞれ担当。

1979年製作/98分/日本
配給:にっかつ
劇場公開日:1979年4月28日

ストーリー

二十四歳の若さで妻の君枝に家出された勇一は、カメラマンになる夢も捨てて、息子の大助を姉夫婦に預け、妻を捜すために運送屋に勤めていた。ある日、勇一はロックバンドの親衛隊同士のいざこざで危ないところだった彩子を助けた。暫くして、勇一のアパートを訪ねて来た彩子は、そこで異常な出血をして勇一の世話になりながらも、勇一の大事にしているカメラを持って逃げてしまう。自分の親切にまんざらでもない勇一は愕然とするのだった。やがて、上司から君枝を青山で見かけたと聞いた勇一は、彩子のことも忘れて、君枝の勤めているというスーパーマーケットに向かった。勇一はスーパーの寮で君枝を激しく詰問し、抱きもしたが、結局、その日は一人で帰った。翌日、勇一がスーパーに行くと、君枝の姿はもうなかった。勇一は仕事もする気になれず、空地に車を止め、物思いにふけっていると、仲間と一緒に売春をしている彩子を見かけた。勇一は彩子にカメラの事を尋ねるが、彼女は身体で返すことしか出来なかった。二人はモーテルに入るが、勇一は君枝のことが忘れられず、彩子を抱くことは出来なかった。しかし、翌日カメラを持って勇一のアパートにやって来た彩子は大助とすぐに親しくなり、その日は三人で遊園地に行って楽しい時を過ごした。勇一にとって、こんなことは久しぶりのことだった。その夜、勇一は君枝を忘れるかのように彩子に挑み、彼女もそれに応じた。しかし、皮肉にも、「君枝が家にいるから会って欲しい」と彼女の兄が伝えにやってきた。君枝が帰ってくることを心配して、主婦然とする彩子に勇一は腹をたてる。君枝が帰って来た。彩子はいたたまれず、出て行った。行くあてのない彩子は、病院に入院している勇一の父の看病をすることにした。暫くして、父は危篤状態になり、姉夫婦、勇一、大助たちが病院にかけつけたが、君枝の姿はなかった。その時、君枝はアパートに訪ねて来た勇一の親友海野に求められ、交渉を持ってしまった。父は皆の名を呼び、君枝の名も呼ぶが、手を握ったのは彩子だった。そして君枝が訪れたとき、父はすでに息をひき取った後であった。彩子はいつの間にか病院から抜け出していた。数日後、飲み屋で彩子を見つけた勇一は彼女を抱く。そのあと、彩子を捜していた両親がやって来た。彼女は口論の末、勇一、両親の前から姿を消す。残った両親を批判した勇一は、彩子の父親に突き飛ばされてしまい、通りかかったパトカーにひかれてしまう。その時、君枝は公園で、大助の遊ぶ姿を遠くから何も知らずに見つめているのだった。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

3.0生活に追われる若夫婦と家出娘の不思議な組み合わせにみる家族の日常

2021年11月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ニューファミリーと言われる今の若い世代の家族の在り方を描いた作品。すれ違う若夫婦の間に高校中退のしたたかで人懐っこい家出娘が加わるストーリー展開は起伏が少ないものの、その少女を演技じる森下愛子の個性と演技が映画の見所になっている。手癖の悪さから私生活の乱れもあり、けして褒められた人物像ではないのだが、不思議な魅力がある。それに主人公勇一の妻君枝役の何処か掴みどころがなく、不甲斐ない生き方を選んでしまう高沢順子がいい。この二人の女優の存在でこの作品は充分楽しめる。
脚本は、日常の生活に密着した視点に立ち登場人物を動かしている。生きるのにひた向きだが、周りに流される不安定さもある。そんな優柔不断な生き方をしている若者を、藤田監督は素直な演出タッチで描く。そこにこの映画の良さも弱さもある。

  1980年 1月24日 ギンレイホール

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Gustav
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