劇場公開日 1973年7月14日

宮本武蔵(1973)のレビュー・感想・評価

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3.5迷剣者伝

2020年12月13日
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鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

興奮

加藤泰監督1973年の作品。

お馴染み『宮本武蔵』の話を映画化した時代劇大作。
ちなみにこの時実に25回目の映画化らしく、今だったら何度目の映画化になっているのだろう…?
星の数ほどある『宮本武蔵』の映画化作品の中でも、有名なのは最高傑作と誉れ高い内田吐夢監督による5部作(1961年~1965年の東映版)だが、自分は稲垣浩監督×三船敏郎主演の3部作(1954年~1956年の東宝版)を結構楽しんだ口。
本作も加藤監督で脚本が野村芳太郎と豪華タッグの松竹版。

話は2部構成。
第1部は、
関ヶ原の戦いに参加して敗れた武蔵。村の厄介者だったが沢庵和尚の教えで修行の旅に出、剣の道に進み、多くの剣豪と相対し、一乗寺の下り松の決闘まで。
第2部は、
説明不要。巌流島での宿敵、佐々木小次郎との決戦。
沢庵によって一本杉に吊るされるエピソード、親友・又八とのエピソード、又八と朱美…。
武蔵とお通は日本映画でも最も有名なカップルと言っても過言ではない。加藤監督の男女愛演出は情感たっぷりの“激愛”。本作でも抜かりなく。
高橋英樹の熱演。
田宮二郎のニヒルな小次郎。
お通・松坂慶子、朱美・倍賞美津子の若々しさ。
他豪華なキャストが揃う中、一際強烈なインパクトを残すのが、フランキー堺演じる又八の母・オババ役の任田順好。武蔵やお通を逆怨みする鬼気迫る怪演であった。
チャンバラ活劇の醍醐味もたっぷり。
演者の顔のアップの多用や、クライマックスの豪雨の中の巌流島決闘では特有のローアングル。
面白味やケレン味も冴え渡り、これぞと言うべき名職人技!

…が!しかし!
内田版の5部作、稲垣版の3部作と比べると、ダイジェスト的なのはさすがに否めない。
一乗寺の下り松での決闘や槍の名手との立ち会い、さらに言ってしまえば、小次郎との決戦も呆気ない。
ひょっとしたら加藤監督も、それは分かり切ってたかもしれない。
描きたかったのは、武蔵の人間的成長、内面。
荒くれ者だった若造が、成熟した大人へ。(高橋英樹が見事、体現)
これまで、勝つ為に斬ってきた。
ある時気付く。
何の為に剣を持つのか。
ボロボロの矛先は武蔵の心そのもの。
迷い迷い、悩み苦しみ、断ち切り、小次郎が待つ決戦の巌流島へ向かう。
そしてその後も、武蔵は何処へ向かうのかーーー?

本作は名剣豪伝ではなく、武蔵を悩み抱える若者に置き換えた趣向。
何度も何度も見聞きした物語だけど、まだまだ語り継がれる剣の道を往く。

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近大