宮本武蔵(1973)

劇場公開日:

解説

吉川英治の同名小説の映画化。動乱の時代、野望に満ちた青年・武蔵の闘争のドラマを厳流島における佐々木小次郎との決闘まで描く。脚本は「花と竜 青雲篇 愛憎篇 怒濤篇」の野村芳太郎と山下清泉、監督も同作の加藤泰、撮影も同作の丸山恵司がそれぞれ担当。

1973年製作/136分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1973年7月14日

ストーリー

〈第一部・関ヶ原より一乗下り松〉作州宮本村の武蔵と又八は、出世を夢みて関ヶ原の戦いに参加したが、敗れて伊吹山中をさまよい歩くうち、お甲・朱実の母娘に救われた。又八はお甲に誘惑され夫婦になり、武蔵は帰国の途中関所破りをして役人に追われるはめになった。一方、又八の母・お杉は、息子が帰らないのは武蔵のせいだと、武蔵に恨みを抱いた。又八にはお通という許嫁がいたが、武蔵が沢庵和尚にいましめられ、千年杉に吊り下げられているのを見たお通は、武蔵を救い出し、共に逃げた。今では武蔵を慕う彼女は、武者修業を目論む武蔵に同行を懇願、武蔵も瞬間の激情にかられて、お通の体にいどむが、自らの行為を恥じ、逃げるように立ち去るのだった。それから三年--。京都の名門・吉岡道場の当主・清十郎は、お甲の営む料亭に入りびたり、朱実に執心していた。又八は、お甲に喰わせてもらい、半ばやけっぱちの生活を送っていた。ある日、武蔵を追い求めて京都に来たお通は、五条大橋の高札で、武蔵が清十郎から試合を申し込まれていることを知った。そして、その直後、お通は、又八、お杉と再会した。お通に未練たっぷりな又八に対してお杉は、武蔵を斬るように叱咤するのだった。数日後、清十郎に犯された朱実が半狂乱となり、入水自殺を計った。丁度その場に居合わせた又八が、朱実を救った。京都に嫌気のさした二人は、新生活を願って大阪へと旅立った。洛北蓮台寺野における武蔵・清十郎の試合は、武蔵が清十郎を一撃のもとに倒す一方的な勝負に終った。清十郎の弟・伝七郎も、蓮華王院・三十三間堂にて武蔵に挑んだが、敗れた。滅亡に瀕した吉岡家では、吉岡家の血につながる少年・源次郎を名目人に立てて、武蔵に試合を申し込んだ。一乗寺下り松には、吉岡一門七〇名が武蔵を待ちうけていた。単身乗り込んだ武蔵は、真っ先に、源次郎を殺した。凄惨な決闘中、武蔵は無意識のうちに二刀を使って、門弟を次々と倒し、勝利を得た……。〈第二部・柳生の里より巌流島〉宝蔵院流槍術、鎖鎌の宍戸梅軒を破って腕に磨きをかけた武蔵だったが、柳生に挑戦したところ、武蔵の剣は殺生剣として試合を否まれ、町の研屋にも、武蔵の刀は殺すだけの刀といわれ、自分の未熟さを知った。やがて、小倉藩細川家の家老長岡佐渡の世話になり小倉に滞在していた武蔵は、宿敵佐々木小次郎と会った。剣の道に迷った武蔵は、沢庵に会って悩みをぶちまけた。だが、沢庵は、剣の道に迷うくらいなら、小次郎に斬られるか、剣を捨てて故郷へ戻り、お通と一緒になれ、とつきはなすだけだった。その頃、宮本村に戻っていたお通は、同じく戻ってきたお杉に危うく絞め殺されそうになるが、昂奮したお杉が急死したおかげで危うく難を逃れる。一方、又八は大阪へ来てから悪事に手を出し、一度は朱実と別れ沢庵の元に身を寄せていたが、やがて、自分の子を抱えた朱実と再会してからは、我が身の旧悪に目覚めるのだった。慶長十七年四月十三日、武蔵と小次郎の試合が、長門の船島で決行されることになった。又八、朱実そしてお通もやって来た。妻と呼んでくれ、と泣くお通に「武士の出陣は笑って送ってくれい」と言い残した武蔵は船島へと向った。試合は一瞬のうちに決まった。小次郎の長刀・物干竿より長い、武蔵の手製のカイが小次郎の脳天を砕いたのだ……。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

3.5迷剣者伝

2020年12月13日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

興奮

加藤泰監督1973年の作品。

お馴染み『宮本武蔵』の話を映画化した時代劇大作。
ちなみにこの時実に25回目の映画化らしく、今だったら何度目の映画化になっているのだろう…?
星の数ほどある『宮本武蔵』の映画化作品の中でも、有名なのは最高傑作と誉れ高い内田吐夢監督による5部作(1961年~1965年の東映版)だが、自分は稲垣浩監督×三船敏郎主演の3部作(1954年~1956年の東宝版)を結構楽しんだ口。
本作も加藤監督で脚本が野村芳太郎と豪華タッグの松竹版。

話は2部構成。
第1部は、
関ヶ原の戦いに参加して敗れた武蔵。村の厄介者だったが沢庵和尚の教えで修行の旅に出、剣の道に進み、多くの剣豪と相対し、一乗寺の下り松の決闘まで。
第2部は、
説明不要。巌流島での宿敵、佐々木小次郎との決戦。
沢庵によって一本杉に吊るされるエピソード、親友・又八とのエピソード、又八と朱美…。
武蔵とお通は日本映画でも最も有名なカップルと言っても過言ではない。加藤監督の男女愛演出は情感たっぷりの“激愛”。本作でも抜かりなく。
高橋英樹の熱演。
田宮二郎のニヒルな小次郎。
お通・松坂慶子、朱美・倍賞美津子の若々しさ。
他豪華なキャストが揃う中、一際強烈なインパクトを残すのが、フランキー堺演じる又八の母・オババ役の任田順好。武蔵やお通を逆怨みする鬼気迫る怪演であった。
チャンバラ活劇の醍醐味もたっぷり。
演者の顔のアップの多用や、クライマックスの豪雨の中の巌流島決闘では特有のローアングル。
面白味やケレン味も冴え渡り、これぞと言うべき名職人技!

…が!しかし!
内田版の5部作、稲垣版の3部作と比べると、ダイジェスト的なのはさすがに否めない。
一乗寺の下り松での決闘や槍の名手との立ち会い、さらに言ってしまえば、小次郎との決戦も呆気ない。
ひょっとしたら加藤監督も、それは分かり切ってたかもしれない。
描きたかったのは、武蔵の人間的成長、内面。
荒くれ者だった若造が、成熟した大人へ。(高橋英樹が見事、体現)
これまで、勝つ為に斬ってきた。
ある時気付く。
何の為に剣を持つのか。
ボロボロの矛先は武蔵の心そのもの。
迷い迷い、悩み苦しみ、断ち切り、小次郎が待つ決戦の巌流島へ向かう。
そしてその後も、武蔵は何処へ向かうのかーーー?

本作は名剣豪伝ではなく、武蔵を悩み抱える若者に置き換えた趣向。
何度も何度も見聞きした物語だけど、まだまだ語り継がれる剣の道を往く。

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近大

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